白色干渉顕微鏡(表面粗さ測定)

白色干渉顕微鏡は、サンプル表面の微細な三次元形状/表面粗さを非接触・非破壊で計測する装置です。高さの検出に光の干渉を利用することで、ナノメートルオーダーの垂直分解能とミリメートルオーダーの高さ/水平測定範囲を両立した、ダイナミックレンジの広さが最大の特徴です。
シリコンウエハのような超平滑面から、ブラスト処理面のような極めて粗い面まで、金属・樹脂・ガラス・電子材料・電気部品など様々なサンプルの形状・うねり・粗さ・質感等を可視化・定量化できます。
※ 類似評価手法...共焦点顕微鏡(レーザー顕微鏡)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、SEMステレオ投影法、触針式表面粗さ測定機

白色干渉顕微鏡の外観


白色干渉顕微鏡 Contour GT-I(Bruker製)

白色干渉顕微鏡の特徴

白色干渉顕微鏡の適用分野(用途)

金属 機械加工面、鏡面仕上げ面、腐食面、摩耗面、摺動面、プレス成型時の表面しわ、表面処理材の外観品質・外観不良(めっき、溶射など)
樹脂、ゴム 成型品の表面性状(粗さ)、劣化に伴う表面荒れ、表面レプリカ
セラミックス、ガラス、半導体 表面性状(粗さ)、スクラッチ、キズ
薄膜 透明膜厚測定
*膜厚1~2μm以上、基材の状態により評価できないものあり
化粧品 質感評価(ファウンデーション等)
錠剤 飲みやすさの評価(表面性状)
塗膜 光沢、へこみ、外観不良
その他 各種試験前後の表面形状・粗さ変化(摩擦、摩耗、疲労、腐食、耐候性、プレス成型、溶接など)、走査型電子顕微鏡が不得意とする、マクロな表面形態観察

白色干渉顕微鏡の原理

白色干渉顕微鏡には、干渉計を内蔵した対物レンズが装着されています。この対物レンズ内で測定面からの反射光と参照面からの反射光を干渉させると、測定面の凹凸によって光路差が生じます。このとき、光源波長をλとすると、λ/2の光路差ごとに明暗の縞(干渉縞)が観測できます(干渉縞像)。
本装置では位相シフト式干渉顕微鏡法(PSI)と垂直走査低コヒーレンス干渉法(CSI)の2つの方法で、干渉縞の情報を高さ情報に変換し、測定面の三次元表面形状を計測することができます。


干渉縞像(光源:白色光、測定面:球面)

(1)位相シフト式干渉顕微鏡法(PSI)

PSIは光源に単色光を使用し、光の波長を物差しとして測定面の高さを検出する方法です。この方法では、以下のように測定面の三次元表面形状を計測します。

  1. 1)高さ方向に決まった間隔で対物レンズを走査し、光路差を既知量だけ変化させた干渉縞像を複数枚取得する。
  2. 2)得られた干渉縞像の明暗から、測定面からの反射光と参照面からの反射光の位相差を求め、測定面全体の三次元形状に変換する

<PSIの特徴>

・高さ分解能:0.1 nm
・高さ分解能は対物レンズの開口数(≒倍率)に依存しない
・測定面は平滑面(隣接する画素間の段差が約100nm以内)に限定

(2)垂直走査低コヒーレンス干渉法(CSI)

CSIは光源に低コヒーレンス光源(白色光)を使用し、対物レンズを垂直走査しながら干渉強度が最大になる位置を求め、測定面の高さを検出する方法です。
白色光の干渉には以下のような特徴があります。

これらの特徴を利用して、CSIでは以下のように測定面の三次元表面形状を計測します。

  1. 1)対物レンズを垂直方向に走査しながら、測定面と参照面の光路差を連続的に変化させた干渉縞像を取得する。
  2. 2)画素ごとに、干渉強度が最大となる対物レンズの位置(ピーク位置)を求める。
  3. 3)画素ごとのピーク位置から、測定面の画素ごとの高さを検出する。
  4. 4)視野内の画素ごとの高さを集合し、測定面の三次元表面形状に変換する。

< CSIの特徴>

・高さ分解能:約1 nm
・高さ分解能は対物レンズの開口数(≒倍率)に依存しない
・隣接画素間の段差制限がなく、大きな高低差でも測定できる※
※ 垂直測定範囲は対物レンズの作動距離未満となります(10倍対物レンズ使用時:約7 mm)


CSI測定原理イメージ
(垂直走査低コヒーレンス干渉法)

※ ブルカージャパン(株)よりご提供

装置仕様

装置名 Contour GT-I(Bruker 製)
※測定用カメラ及びソフトウェアは後継機 Contor Xシリーズ同等にアップグレード済み
測定方式 位相シフト干渉法(PSI)
垂直走査低コヒーレンス干渉法(CSI)
分解能 高さ 0.1 nm(PSI),1 nm(CSI)
水平 0.5 ~ 3.8 μm ※対物レンズに依存
測定範囲 高さ ~100 nm(PSI),~7.4 mm(CSI)
水平 150×150 mm(連結測定時)
連結測定 3000視野まで
ステージ サイズ 165×115 mm
ストローク 150×150 mm
レンズ 対物 2.5倍,5倍,10倍,50倍
内部 0.55倍,1倍,2倍
測定用カメラ 1200×1000画素、モノクロCCD

サンプル仕様

幅×奥行 165×115 mm のステージに固定できるサイズ(はみ出し可)
高さ 100 mm まで
重量 10 kg まで
反射率 0.05 % ~ 100 %(透明体、鏡面体可)
その他 軟質サンプル、粘着質サンプル可(光学式・非接触測定のため)
透明膜の膜厚・膜表面形状・膜-基材界面形状測定可

白色干渉顕微鏡を用いた調査事例

事例1:ラップ研磨面の測定(材料:SKD11、PSI測定)

PSI測定では、サブナノメートルオーダーの高さ分解能で表面形状を評価できます。
この事例では、ラップ研磨面(鏡面)における、数nmの微小な研磨傷や、研磨されにくい硬質組織のわずか数10nmの凸部も明確に可視化できました。

PSI測定は、鏡面仕上げ面の粗さ評価や、シリコンウエハ上の微小な凹凸や傷、
金属を酸洗・エッチングした際に形成される結晶粒界の溝深さ・結晶粒間の段差などの評価等にも活用しています。

事例2;シボ加工面の使用に伴う外観変化(試料;樹脂製PCマウス、CSI測定)

CSI測定は、ナノメートルオーダーの高さ分解能を維持したまま、広範囲の表面形状を評価できます。この事例では、マウスボタンのシボ加工面が、使用に伴い光沢化した部分を測定しました。
CSI測定の特徴である広範囲・高精度な測定と、適切な解析手法の組み合わせで、シボ加工面の凸部が指との接触で摩耗した様子を、視覚的にも定量的にも評価することができました。

このような手法は、三次元的な表面凹凸を活用して、撥水性、接着性、潤滑性等の機能を持たせた表面(機能性表面)や意匠性・外観不良といった外観品質の定量的な評価に活用しています。

<補足>
図7;測定結果にS-フィルタを適用に測定ノイズなどの微小粗さを除去後、F演算として傾斜を補正した表面データのコンター図です。表面のうねり成分+粗さ成分の情報を保持し、規格ではS-F表面と呼びます。

図8;S-F表面にL-フィルタを適用してうねり成分を除去した表面のコンター図です。表面の粗さ成分の情報を保持しており、規格ではS-L表面と呼びます。

図9;S-L表面のデータにSq(高さの標準偏差)の空間フィルタを適用したデータのコンター図です。ある画素に対し周囲のデータからSqを求め、その画素に計算されたSqをプロットしたデータとなります。

事例3:研削加工面とバイブレーション研磨面の三次元表面性状

研削加工面とバイブレーション研磨面の三次元表面性状

事例4:摩擦摩耗試験後 試験片の摩耗量計測(ボールオンディスク試験)

当社では多種多様な材料試験を受託しており、その試験後評価に白色干渉顕微鏡を活用しています。その中で、摩擦摩耗試験後の摩耗量計測をご紹介いたします。

白色干渉顕微鏡は、高さ分解能が対物レンズの開口数(≒倍率)に依存しないため、低倍率の対物レンズでも広範囲を高速・高精度に測定することができます。上図のように、摩耗痕全体の表面形状を測定することで、測定箇所によるばらつきの影響を受けずに、摩耗量全体を正確に評価することができます。

一方、共焦点顕微鏡では、対物レンズの倍率を下げると(開口数が低くなると)高さ分解能が低下するため、広範囲を高精度に測定することは得意ではありません。そのため、摩耗試験後の摩耗痕を共焦点顕微鏡で評価する際は、通常、摩耗痕の一部のみを計測します。しかしながら、このような場合、計測箇所ごとの摩耗量のばらつきが評価結果に影響を与えてしまうことがあります。

摩耗試験(ボールオンディスク)

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