高温ビッカース硬さ試験
高温ビッカース硬さ試験とは
高温ビッカース硬さ試験は、新材料開発、品質管理、クレーム調査等に頻繁に活用されています。金属材料一般に、引張強さと硬さとは相関があることから、小試験片で測定した材料表面硬さは、引張り強さの推測にも度々活用されています。対象物表面の硬さ測定はもちろんのこと、溶接材断面や表面処理材、引張試験片の採取が困難な製品、部品の一部など特定箇所の測定に有効です。
高温ビッカース硬さ試験機の外観
高温ビッカース硬さ試験の特徴
- 試料と圧子の両加熱、且つ高精度な温度制御が可能
- 他の高温材料試験と比べ、小試験片から多くのデータ収集が可能
高温ビッカース硬さ試験の適用分野(用途)
- エネルギー、エンジニアリング分野の高温設備
- 自動車分野の金型部品、エンジンバルブ、歯車など
- 切削工具、工作機械の部品材料など
その他、金属材料全般
高温ビッカース硬さ試験の原理
試験原理は通常のビッカース硬さ試験と同様です。
高温環境下で、正四角錐形の圧子を試料の表面に押し込み、その試験力を解除した後、表面に残ったくぼみの対角線長さを顕微鏡で測定します。
ビッカース硬さは試験力をくぼみの表面積で除して得られる値に相当します。
装置仕様
試験機 | 高温マイクロビッカース硬度計 (株)インテスコ |
試験荷重 | 1000gf、500gf、300gf、200gf、100gf、50gf |
加熱温度 | 室温~1100°C(圧子、試料ともに) |
圧子形状 | 対面角136°正四角錐 *圧子材料:ダイヤモンド,サファイア |
測定雰囲気 | 真空中、不活性ガス |
サンプル仕様
- 試料形状 :5mm×5mm×10mm(測定面5mm×10mmを鏡面仕上げ)
高温ビッカース硬さ試験の事例
事例1;圧子加熱有無による硬さ測定値への影響
●対象材料:インコネル713C
圧子の加熱有りと無しで測定した結果を示します。
JIS規格には、特に圧子加熱の有無およびその方法について規定されていませんが、試料と圧子の両方を加熱して測定した方が、温度依存による硬さの低下が顕著に出ていることが確認できます。
事例2;組織打ち分けによる硬さ比較
●対象材料:FC鋳鉄
黒く細長い組織が片状黒鉛でその周りを白く覆うようにフェライトが存在しています。また、マトリックスはパーライトとなります。大きな試験荷重で材料混合組織の平均的な硬さを測定し、小さな試験荷重でパーライト組織を狙った(写真中央のひし形くぼみ)、組織の打ち分けによる硬度比較の例を示します。
注意点
対象は固体サンプルのみで基本形状での測定を推奨しています。
材料加熱に伴う蒸気の発生、著しいサンプルの軟化等で測定不可となる場合があります。その他、お問合せ内容に応じてご相談させていただきます。
公的規格
- JIS Z 2252 高温ビッカース硬さ試験方法
参考技術情報
- HRM-0913 高温ビッカース硬さの測定(追加記載分)
- NGM-2204 高温加熱ステージを利用した高温硬さ測定
- NGM-2203 表面処理した軸受け鋼のナノスクラッチ試験
- NGM-2202 ポリカ―ボネート(PC)シートの粘弾性測定
- NGM-2201 高速連続測定による硬さ分布測定
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