ナノインデンテーションシステム(ナノインデンタ―)

ナノインデンテーションシステム(ナノインデンタ―)とは

ナノインデンテーションシステム(ナノインデンタ―)とは、超小型圧子を押込んで、その材料の荷重-変位曲線を求め、硬さやヤング率を測定する装置です。従来は、基本機能(硬さ、弾性率)の測定が主でありましたが、近年ニーズの多様化と装置改良による機能向上(高温測定、動的粘弾性測定、スクラッチ法による摩擦係数及び耐摩耗評価)により高機能測定が急速に拡大しております。特に、薄膜や表面改質層(例:自動車部品DLC硬質膜、金属メッキ膜、樹脂保護皮膜、防食コーティング)では、高機能ナノインデンテーションが重要な評価方法となりつつあります。

ナノインデンテーションシステム(ナノインデンタ―)の外観

ナノインデンテーションシステム(ナノインデンタ―)の適用分野

分野 対象事例 測定モード
自動車 バルク材(含むホットスタンプ材、クラッド材、複合材料) (高温)硬さ
塗装、メッキ、コーティング (高温)硬さ、粘弾性
硬質めっき、硬質被膜(DLC) (高温)硬さ、スクラッチ
燃料電池 特殊電極、セパレータ 高温硬さ
金属多孔体他 高温硬さ
電子部品 半導体(基板、新材料) (高温)硬さ、スクラッチ
絶縁被膜 硬さ、スクラッチ
その他 高分子、ゴム、樹脂 高温硬さ、粘弾性

装置仕様

荷重 最大荷重 10mN
分解能 1nN
CSM時加振周波数 0.1~300HZ
変位計測 最大変位 5μm
分解能 0.01nm
スクラッチ摩耗時 X方向最大変位 15μm (水平力測定可能)
その他 高速測定 最大6インデント/sec
高温測定 RT~800°C(Ar雰囲気制御)
最大試料サイズ 100x100x30mm
*高温測定時:5mmφx5mm以下

ナノインデンテーションシステム(ナノインデンタ―)の原理

試料表面にダイヤモンド製圧子を押込み、その時の荷重-変位曲線をナノスケールで測定することで、微小領域の硬さ・ヤング率を測定します。
また、圧子の押込み時に微小振動を与え、荷重に対する変位の応答遅れを計測することで、粘弾性挙動も測定することができます。


図 圧子の動きと荷重-変位曲線

圧子

得られる特性値

ナノインデンテーションシステム(ナノインデンタ―)による評価事例

事例1;高速連続測定による硬さ分布測定

●対象試料 窒化処理された市販の軸受け鋼(SKD鋼)

本装置は、プログラムされた連続打点により高速連続で硬さ・ヤング率を自動測定できるために、材料の微細構造や異相境界の硬さ分布をマッピングで分かりやすく観察することができます。

事例2;ポリカ―ボネート(PC)シートの粘弾性測定

●対象試料 市販のポリカーボネート(PC)シート(厚み2mm) 

本装置では、従来の圧子に微小振動を与えることで、レオメーター同じ粘弾性測定が適用できます。特に、ナノインデンテーションの利点を活かして、高分子材料の被膜、複合材料等のナノ領域の測定が可能です。


図1  粘弾性の測定概念図

図2  粘弾性特性の温度依存性(f:105Hz)

事例3;表面処理した軸受け鋼のナノスクラッチ試験

●対象試料 表面にPVD処理(TiAlN)された窒化処理軸受け鋼(SKD鋼)

本装置では、円錐圧子を用いて荷重を単調に増加させながら表面を引っ掻くことでスクラッチ摩耗性が評価できます。また、水平方向の反力も測定できますので、動摩擦係数も測定可能です。


図1  試料断面とスクラッチの状況

ブルカージャパン(株)カタログより引用


図2  各層の深さプロファイルの比較

事例4;高温加熱ステージを利用した高温硬さ測定

●対象試料 市販の高張力鋼 厚さ2.9mm 

加熱ステージを装着することで、800°Cまでの温度依存性を含む材料の機械特性評が可能です。


図1 加熱ステージ*

ブルカージャパン(株)カタログより引用

*加熱ステージは、上下に分割されたヒーターユニット構成されており、均一な試料温度を実現します。また、Arガスを導入し試料の酸化を極力防止します。


図2 硬さとヤング率の温度依存性

公的規格

参考技術資料

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