高速引張試験
高速引張試験とは
金属や樹脂等の材料が動的な負荷を受ける場合、一般的な引張試験によって模擬される静的な負荷を受けた場合とは大きく異なる機械的性質や変形挙動を示すことが知られています。このため高精度な衝突解析や高速度加工のシミュレーションには速度に依存する材料特性を把握が必要不可欠であり、高速引張試験はその評価として有効な試験の一つとなります。
当社では油圧サーボ式試験装置を用いた高速引張試験に加え、高速度カメラによる詳細な高速変形挙動観察や、高低温に対応できる恒温槽の併用でより実用的な使用環境にあわせた条件下での動的負荷特性の評価をおこなうことができます。
高速引張試験機と高速度カメラの外観
高速引張試験の特徴
- 1台の試験機で0.1~20000mm/sまで広い速度域での試験に対応
- 最高峰のハイスピードカメラ採用により高速度域でも高分解能なDIC可能
- 特に樹脂材料で重要となる高/低温環境での試験に対応
高速引張試験の適用分野
- 金属材料(鉄,アルミ等)
- 非金属材料(樹脂系材料全般)
高速引張試験で得られるデータ
油圧サーボ機構と助走機構の設けられた専用試験機により、幅広い速度域内の任意に制御された試験速度での引張試験を実現、静的試験同様の応力―ひずみ関係を計測し、材料特性の速度評価することができます。この際、動的試験では(準)静的試験と比べ、検出器の振動や共振等に代表される種々のノイズが大きな問題となりやすいため、必要に応じて各種データ処理を施し、利用しやすい形とした上でデータ提出をおこないます。
また高速度カメラによる撮影および取得した画像を用いての二次元デジタル画像相関法(2D-DIC)解析に対応しており、衝撃負荷を受けた際の詳細な変形挙動を視覚化した画像や部位ごとの変形量を定量化したデータを得ることが可能です。
高速度カメラによる撮影は電子回路走査速度の物理的な制約から、現状においては高フレームレートほど時間または空間分解能が低下することが不可避となりますが、弊社では現状(2021年初頭導入時~)最高峰のスペックに加え、引張試験に適した縦長の視野角をもつ機種を採用しており、比較的高速度まで高分解能のデータを取得することが可能となっています。
また恒温槽の併用により、温度依存性も同時に評価もおこなえます。
高速度カメラ撮影画像視野角の変化とDIC解析例(ひずみ分布コンター図)
装置仕様
高引張試験装置 | 装置名称 | ハイドロショットHITS-T10 (株)島津製作所製 |
---|---|---|
衝撃試験力 | ~ 20kN | |
試験速度 | 0.1~20000mm/s | |
ピストンストローク | Max 240mm | |
恒温槽内温度範囲 | -40°C~150°C | |
高速度カメラ | 装置名称 | MEMRECOM ACS-1 (株) ナックイメージテクノロジー製 |
有効画素数 | Max1280×896 100kFPS;1280×448pixel 200kFPS;1280×192pixel |
|
速度 | 50~1,000,000 FPS (推奨~200,000FPS) | |
ISO感度 | 100000 | |
画像解析ソフト | ソフト名称 | VIC-2D |
計測レンジ | 0.005~2000% | |
計測感度 | 1/100 pixel |
高速引張試験の事例
試料;各種樹脂材
引張速度毎の荷重-変位関係変化:樹脂材A
引張速度毎の荷重-変位関係変化:樹脂材D
引張速度による耐荷重の変化挙動
樹脂材高速引張試験中のひずみ分布図
試料:炭素鋼
引張速度による応力―ひずみ関係の変化:炭素鋼
引張速度による0.2%耐力と引張強さ変化
鋼材高速引張試験途のひずみ分布
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