走査型プローブ顕微鏡(SPM)

SPM;Scanning Probe Microscopy

走査型プローブ顕微鏡(SPM)とは

走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、極微細な探針(プローブ)を用いて試料表面のナノメートルサイズからマイクロメートルサイズまでの表面凹凸形状や機械物性、電気・磁気物性を測定する装置です。

走査型プローブ顕微鏡(SPM)の外観


SPM 日立ハイテクサイエンス AFM5500M

走査型プローブ顕微鏡(SPM)の特徴

走査型プローブ顕微鏡(SPM)の適用分野

固体試料の表面に対して

装置仕様

装置名 日立ハイテクサイエンス AFM5500M
測定可能領域 試料ステージ(直径100mm)全面
最大走査範囲 200μm×200μm (ステージを動かさずに測定可能な範囲)
測定環境 大気中・常温・常湿
測定モード 形状測定 原子間力顕微鏡
機械物性 位相、摩擦力、 フォースカーブマッピング
電気物性 電流分布、抵抗分布、 表面電位、圧電応答
磁気物性 磁性マッピング

サンプル仕様

SPM/AFM(原子間力顕微鏡)の測定原理

SPM測定は、原子間力顕微鏡(atomic-force microscopy:AFM)を基本としています。

AFM(広義)の原理: 探針とサンプル間の距離が一定になるように圧電素子のZ軸を上下させながら表面を走査(XY軸)し、その時に圧電素子に掛けた電圧を画像化することで凹凸形状像を得ます。探針とサンプル間の距離を測定する主な方法にはコンタクトモードとダイナミックモードがあります。それぞれを測定目的に応じて使い分けます。


SPMの基本的な装置構成

コンタクトモード(AFM)の動作

コンタクトモード (AFM:atomic-force microscopy )
探針の先端を試料表面に接触させる。探針とサンプル間の距離はカンチレバーの反りの変化を検知することで得る。(狭義のAFM)
→探針とサンプルが常に接触している
測定目的:摩擦力、電流・抵抗分布、機械物性


コンタクトモードの動作

ダイナミックモード(AFM)の動作

ダイナミックモード (DFM:dynamic-force microscopy )
カンチレバーを共振させて、試料表面に接近させる。探針とサンプル間の距離はその共振周波数の変化を検知することで得る。
→探針とサンプルは間欠的に接触する
測定目的:位相像、表面電位分布、磁気力分布


ダイナミックモードの動作

走査型プローブ顕微鏡(SPM)の事例

事例1;形状測定(DFM):Dynamic-Force Microscopy

形状測定例1:ステンレス鋼板表面

光輝焼鈍処理を行ったステンレス鋼板の表面粒界部

形状測定例2:アクリル樹脂粉末(球)

アクリル樹脂粉末(透明粒子)の形状測定

事例2;電流同時測定AFM(CPAFM):Conductive-Prove Atomic Force Microscope

CPAFMの測定原理

形状測定例:溶接スラグの導電パス調査

断面試料を作製し、基材をアースして電流分布像を測定。
反射電子像で明るい部分と電流分布像の明部が対応しており、組成の差により電流の流れ易さが異なることが示唆されます。

事例3;摩擦力顕微鏡(FFM): Friction-Force Microscope

FFMの測定原理

FFM測定例1:球状黒鉛化鋳鉄断面

黒鉛部分の摩擦が大きい傾向が認められました。

FFM測定例2:表面処理が施された食品用ポリスチレンシート表面

数μm□領域の微細な摩擦力分布を測定できます。
摩擦力の高い部分が微細な海島構造を有していました。

事例4;磁気力顕微鏡(MFM):Magnetic-Force Microscope

MFMの測定原理

MFM測定例1:フェライト系ステンレス鋼の磁区分布

MFM測定例2:非磁性材料(SCH24相当材)中の磁化領域調査

非磁性のオーステナイトステンレス鋼にわずかに磁性が認められたため、その磁性がどこで生じているか探索しました。断面試料についてMFM測定を実施した結果、析出物の周囲に磁性領域を検出しました。TEM観察にて、析出物はCr炭化物であり、磁性領域にCr欠乏層を確認しました。

参考技術資料

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