密度測定
密度測定とは
固体や粒子の密度は、「真密度」「見掛け密度」「かさ密度」など、定義の異なる複数の密度が存在します。
密度とは、試料の単位体積に含まれる質量(単位例:kg/m3)をいい、比重とは、試料の質量と、それと同体積の圧力1013.25 hPaのもとにおける4°Cの純粋な水の質量との比(単位なし)をいいます。定義の異なる密度について
定義の異なる密度について
各密度から、下記の計算により、開気孔率、閉気孔率、全気孔率が求められます。
開気孔率=(見掛け密度-かさ密度)/見掛け密度×100(%)
閉気孔率=全気孔率-開気孔率
全気孔率=(真密度-かさ密度)/真密度×100(%)
1.真密度測定
真密度(真比重)測定は、開細孔等が無くなるように試料をよく粉砕し、ゲーリュサック型比重瓶(ピクノメータ)法を用いて測定します。試料の空隙を完全に液体で脱気置換し、その重量と体積の 関係を計算し、真密度(真比重)を求めます。
真密度測定の適用分野(サンプル仕様)
- 固体・粉体試料に適用可能
- 150μm程度に粉砕後測定
- 必要試料量;10g程度
2.見掛け密度測定
見掛け密度(見掛け比重)測定には、(1)液中ひょう量法,(2)気体置換法,(3)ルシャテリエ比重瓶法,(4)液浸法が適用されます。
(1)液中ひょう量法
- 試料を空気中及び密度が既知の液体中で、天秤を用いて、質量及び浮力を測定し、これから密度を求める。(図1)
液中ひょう量法の特徴
- 高精度な測定が可能
- 大型試料にも適用可能
- 微粉末には適用不可
液中ひょう量法の適用分野(サンプル仕様)
- 固体試料に適用可能(微粉末は不可)
- 試料は300 g以下 金網(φ70)に乗る大きさまで
(2)気体置換法
図2構成概略で、同一体積を持った空の試料室Vcと比較室VAの間に遮断弁を設け、試料室を1気圧まで加圧後、遮断弁を開けて比較室へガスを解放すると、試料室の圧力は1/2気圧に低下します。サンプルを入れて試料室の体積が1/2になった場合には、同様の操作によって得られる圧力は1/3気圧になります。
圧力と体積の関係は、気体の状態方程式、すなわち PV=nRT に従うため、圧力Pの測定からサンプルの体積Vpを算出することができます。
Vp=Vc-VA/(P1/P2-1)
Vp:試料の体積 (m3)
Vc:試料セル空間の容積 (m3)
VA:膨張空間の容積 (m3)
P1:Vcに試料を入れ、大気圧以上に加圧した際の系内の圧力 (Pa)
P2:系内圧力P1状態からVcとVAの間にある電磁弁を開いた際の系内の圧力(P2<P1) (Pa)
気体置換法の特徴
- 粉体や水に溶ける試料でも測定が可能。
装置仕様
- 測定装置:Anton Paar社製 Ultrapyc 5000 Micro型
- 測定方法:気体置換法(JIS R1620準拠)
- 使用ガス:ヘリウムガス
- 試料容器:容積 4.5cc 内径 15.9mm 深さ 24.6mm
気体置換法の適用分野(サンプル仕様)
- 測定対象:固体、セラミックス、金属等の粉体、多孔体等
- 粉体や水に溶ける試料でも測定が可能。
- 試料形状:試料容器(φ15.9mm×24.6mm)に入る形状
(3)ルシャテリエ比重瓶法
- セメントの密度試験法(JISR5201)に採用されている。ルシャテリエフラスコの目盛0~1ml(目盛線C)まで浸液を満し、次に試料100gを入れ振とうして空気を追い出したのち液面(目盛線D)を読む。(図3)
ルシャテリエ比重瓶法の特徴
- 試料の体積が直読みができる。
ルシャテリエ比重瓶法の適用分野(サンプル仕様)
- セメント、粒径が数mm以下の粒状品または粉末
- 必要試料量:200g以上
★ゲーリュサック型やハーバード型比重瓶法にも対応可能です。ご相談下さい。
(4)液浸法
- 試料をメスシリンダー中の水等に沈め、試料投入前後の液面の変化より試料体積を測定し、試料重量より算出する。
液浸法の特徴
- 試料の体積が直読みできる。
液浸法の適用分野(サンプル仕様)
- コークス・石炭
- その他粒状品又は粉末
アルミニウムの見掛け密度測定の例
<試料>
材質:アルミニウム 状態:固体 形状:直方体
<測定結果>
・試験片体積が約1cm3以上 ⇒文献値との差は±0.5%程度。
・試験片体積が約0.7cm3未満 ⇒文献値との差は±7%程度。
- 試験片の体積が大きいほど測定精度が上がります(目安:約1cm3)。
- 試験片の体積が小さいと測定精度が下がりますが, それでも±数%程度の誤差で測定が可能です。
3.かさ密度測定
かさ密度(見掛け比重)測定には、(1)容器法、(2)漏斗法、(3)幾何学的測定法が適用されます。
また粉体試料を対象とした場合、容器に「ゆるく」充填した場合の「ゆるめ(ゆるみ)かさ密度」と,容器をタッピングしながら充填した「固めかさ密度(タップ密度)」があります。(図3)
かさ密度測定の適用分野(サンプル仕様)
- 容器法・漏斗法:粉体・固体
- 幾何学的測定法:直方体、円柱、球
微粉のタップ密度測定の例
タップ密度は,測定容器に粉体試料を入れ、容器を硬い台上に落下させてタッピングを行い,試料の表面高さが変化しなくなったとき(密充填)のかさ密度をいいます。各分野の JIS 規格や日本薬局方等で使用されており、規格ごとに容器の詳細やタッピングの掛け方が規定されています。
JIS Z 2512「金属粉―タップ密度測定方法」及び、日本薬局方(2水準)にて、タップ密度を測定しました。結果は図2の通りです。
条件1:JIS Z 2512 (金属粉) |
条件2:日本薬局方 | 条件3:日本薬局方 | |
---|---|---|---|
タップストローク | 3mm | 3mm | 14mm |
タップ速度 | 125回/分 | 250回/分 | 300回/分 |
測定容器の容積 | 100cm3 | 250cm3 | 250cm3 |
試料量 | 100mL容器の 擦切り量(最大量) | 50g(見掛け密度小さい為) | |
タップ回数 | 100~3000回 |
★各公定法(ISO,JIS,日本薬局方等)に準拠したタップ密度の評価が可能です。
公的規格
【真密度】
- JIS K 0061 化学製品の密度及び比重測定方法
- JIS K 2151 コークス類-試験方法
- JIS Z 8807 固体の密度及び比重の測定方法
【見掛け密度】
(1)液中ひょう量法
- JIS K 0061 化学製品の密度及び比重測定方法
- JIS Z 8807 固体の密度及び比重の測定方法
- JIS R 2205 耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・ 比重の測定方法
- JIS Z 2501 焼結金属材料−密度,含油率及び 開放気孔率試験方法
- JIS R 1634 ファインセラミックスの 焼結体密度・開気孔率の測定方法
(2)気体置換法
- JIS Z 8807 固体の密度及び比重の測定方法
- JIS R 1620 ファインセラミックス粉末の粒子密度測定方法
(3)ルシャテリエ比重瓶法
- JIS R 5201 セメントの物理試験方法
- JIS K 0061 化学製品の密度及び比重測定方法
- JIS Z 8807 固体の密度及び比重の測定方法
※ゲーリュサック型やハーバード型比重瓶法にも対応可能です。
(4)液沈法
- 日本粉体工業技術協会規格 SAP 02-82 造粒物の見掛け密度測定方法
【かさ密度】
(1)ゆるめ
- JIS R 1628 ファインセラミックス粉末の かさ密度測定方法
- JIS Z 2504 金属粉−見掛密度測定方法
- ASTM B212 ホール流量計漏斗を使用した自由流動金属粉末の見掛け密度の標準試験方法
- 日本薬局方
(2)固め(タップ)
- JIS Z 2512 金属粉―タップ密度測定方法
- JIS K 5101-12-2 顔料試験方法− 第12部:見掛け密度又は見掛け比容− 第2節:タンプ法
- 日本薬局方
参考技術資料
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- 石炭及びコークスのハードグローブ粉砕性指数(HGI)測定
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