灰溶融性測定

石炭火力発電所は、微粉炭やバイオマスなどをボイラーで燃やして蒸気を発生させ、タービン・発電機を回して発電しますが、燃焼により生成した灰により、1)スラッギング(灰付着・堆積)、2)後部伝熱面でのファウリング(凝縮した Na2SO4など付着)、3)後部伝熱面後流での低温ファウリング(高Ca炭燃焼灰による伝熱面への付着・堆積)などの障害が発生し、伝熱効率低下などに繋がることが知られています1)。そのため、安定操業を行うためには、灰の付着特性(化学組成や融点などの溶融特性など)を把握することが非常に重要となります。
灰の溶融性試験については、JIS M 8801、ASTM D1857、ISO 540 などで規定されており、試験錘の形状変化から溶融特性温度を評価します。

装置の概略図

灰溶融性測定の原理

装置は、上図に示す加熱炉、試料形状観察用カメラ、制御用PCから構成されています。測定では、初めに灰化した試料を練合せて試験錘を作製します。次に、雰囲気制御した加熱炉内で昇温しながら試験錘の形状変化を観察・記録し、各規格で制定された寸法変化条件に基づいて、溶融特性温度を評価します。各規格の溶融特性温度は下表のように定義されています。

溶融温度の定義2)

項目 JIS M 8801 ASTM D1857
試料形状

三角錐
(一辺が底辺に垂直)

三角錐
(一辺が底辺に垂直)

軟化

軟化点

三角錐の頂部が解けて丸くなり始めた温度

変形開始温度

三角錐の先端が丸くなり始める温度

球軟化 ---

球軟化温度

高さが底辺の長さに等しくなる温度

溶融

融点

溶融して高さが底辺の長さの1/2になった温度

半球温度

溶融して高さが底辺の長さの1/2になった温度

流動

溶流点

融点の時の高さのほぼ1/3の高さになった温度

流動温度

ほとんど平板状に融け、その高さが最大1/16inchになった温度

装置仕様

加熱 試験温度 約100°C〜1650°C
昇温速度 約2.5°C/分〜8°C/分
雰囲気 大気、還元性(CO:CO2=6:4) ※その他ご相談
炉心管 炉心管材質 Al2O3
炉心管内径 約50mm
記録方式 写真、動画(1〜30fps)
対象試料 石炭やバイオマス燃料の灰分スラグなど

サンプル仕様

灰溶融性測定の事例

認証標準物質(石炭灰)の溶融性試験実施例

認証標準物質(石炭灰)を測定し、認証値および併行許容差判定と比較を行いました。

試験条件


石炭灰の溶融性試験結果

表 認証標準物質(石炭灰)の溶融特性温度 (°C)

項目 計測値 併行許容差 認証値±2σ
軟化点 1,335、1,347 35 1,349±36
融点 1,403、1,406 25 1,398±18
溶流点 1,429、1,436 35 1,429±34

併行許容差:JIS M 8801 表12.1参照

認証標準物質(石炭灰)を測定した結果、JIS M 8801で規定されているn=2の併行許容差範囲内であり、さらに認証値に近似した良好な結果が得られました。

石炭火力発電所の操業に影響を及ぼす灰の溶融特性についてご紹介しましたが、石炭やバイオマスなどを燃料として使用する場合は、発熱量や工業分析、灰組成、元素分析などの燃料の特性も重要となります3)
当社ではこれらについても一括した測定対応が可能なので、是非お問合せ下さい。

参考技術資料

参考文献

  1. 1)石川島播磨技報, vol45. No1(2005-3).
  2. 2)九州大学中央分析センター,センターニュース, Vol.35, No.2, 2016, 132.
  3. 3)電中研レビュー, No.46, 第1章.

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