熱機械分析法(TMA)
TMA:thermomechanical analyzer
熱機械分析(TMA)とは
熱機械分析装置(TMA:thermomechanical analyzer)では、試料温度をプログラムに従って変化させていき、その過程で試料に一定の圧力を加えながら試料寸法の変化を測定します。
線膨張率(一方向の長さの変化率)、ガラス転移温度、軟化温度などの熱物性値を測定することが可能です。
熱機械分析(TMA)の原理
荷重発生部からプローブを介して試料に一定荷重を与えながら、加熱炉で試料温度を変化させます。
温度変化に対応して試料に熱膨張や軟化等の変形が起こると、それに伴う変位量がプローブの位置変化量として変位検出部で計測され、TMA信号として出力されます。
装置の概略図

熱機械分析(TMA)から得られる情報

測定結果は、横軸が温度(°C)、縦軸は測定開始からの変化量(μm)で表示されます。
圧縮膨張測定では、温度に対する伸びの比率から膨張率(線膨張係数)が得られます。また、膨張率の変化からガラス転移温度を測定することが可能です。

針入測定により、試料の軟化による軟化点(軟化温度)を測定することが可能です。また、針入量を用いて塗膜の厚さを計測することも可能です。
TMA測定モード

装置仕様
装置名 | 日立ハイテクサイエンス社製 TMA/SS6100 | |
測定方式 | 縦型全膨張式 | |
測定項目 | 熱膨張量(収縮量)、線膨張係数、ガラス転移点、軟化点、曲げ変形量 等(低温用のみ) | |
測定モード | 4種(圧縮・膨張、針入、引張、曲げ) | |
温度範囲 | -130°C~600°C(解析-100°C~) | |
昇温速度 | 0.01°C~100°C/min(通常は5°C/min) | |
測定レンジ | 変位:±5000μm(感度は0.02μm) | |
雰囲気 | N2、Ar、大気 *その他ガスに関しては要相談 |
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試料形状* | 膨張圧縮モード | Max10mmφ×20mm長 |
引張モード | Max4mm幅×20mm長×1mm厚程度 *試料を治具に固定するため50mm長以上が望ましい |
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荷重制御 | 一定(荷重:±150gf (=1471mN)) 定速(0.1mN~107mN/min) 周期(0.001Hz~1Hz) ※最大10ステップ |
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特長 | ・変位制御や荷重制御設定により、熱収縮応力の測定や熱硬化反応の測定も可能 ・4種類のプローブを使い分け、さまざまな測定に対応 |
熱機械分析(TMA)の事例
(1)膨張・圧縮

50°C付近に伸びの変位が見られます。これはガラス転移により膨張率が変化した結果です。
(2)針入

軟化点は、プローブが試料が軟らかくなるにつれて試料に接している状態から試料に埋まっていく過程を測定します。また軟化点の違いと針入量より、塗膜の厚さの計測も可能です。
プローブ先端径は1mmと0.5mmの2種類あり、シート状試料やフィルム、薄膜、固体試料などの評価が可能です。
(3)引張

延伸方向と延伸軸に垂直方向の2試料を測定することで異方性の評価も出来ます。また、金属製プローブを使用することで試料間の相対的な応力評価も可能です。
試料最大形状:20mm×4mm×1mm
(4)カップ&ピンを用いた硬化測定

熱硬化樹脂などの硬化時間や硬化温度の測定に、写真のカップ&ピンの治具を用います。
ピンに上下方向振動荷重を与えて動かし、ピンが動かなくなったところで硬化したと考えます。
上記の測定結果は、測定温度5°C、17°C、30°Cで、硬化時間はそれぞれ63.8分、31.0分、21.7分となりました。硬化時間の温度依存性を評価することができました。