HAXPES事例データ
硬X線光電子分光法
HAXPES;Hard X-ray photoelectron spectroscopy
硬X線光電子分光法(HAXPES)とは
硬X 線光電子分光法( HAXPES )は、硬X線を用いて試料の表面および深部の元素分析や化学結合状態を非破壊で解析する手法です。従来の X 線光電子分光法(XPS)よりも深い表層領域を調べることができます。
硬X線光電子分光法(HAXPES)の特徴
1.深い分析能力・非破壊分析
従来のXPSよりも数~約10倍深い,50nm程度までのバルク状態評価が可能。埋もれた界面の結合状態をダメージレスで評価。
2.高エネルギーX線を使用
高エネルギーなX線励起により、より深い内殻軌道を用いた評価が可能。
元素ピーク干渉や重畳の回避、解析が容易な1s軌道利用など行うことができます。
XPSとHAXPESの違い

硬X線光電子分光法 (HAXPES)の適用例
- ・金属腐食表面;深さ方向状態変化の評価
- ・コアシェル型ナノ粒子;界面の結合状態評価
- ・リチウムイオン電池;Si系負極材、正極金属酸化物のバルク状態評価
硬X線光電子分光法(HAXPES)を用いた測定事例
事例1;チタン(Ti)表面の非破壊深さ方向評価
Ti板上の酸化皮膜と母材Tiまでの深さ方向の化学結合状態が非破壊で得られます。
従来のXPSでは母材までのデータを得るためにはArスパッタリングを行うことから、イオンミキシングによって構造の乱れを生じることがありますが、HAXPESでは直接測定ができます。

事例2;アルミの深さ方向化学状態評価
HAXPES装置のX線源とサンプルとの角度を変えることにより、 Arイオンスパッタリングを行わなくても、分析深さを変えることができます。
深さの違いをAl2pスペクトルの化学結合状態の変化を比較した測定例を示します。

X線のエネルギーに加えて、光電子の検出角を変化させることで、様々な深さの情報を取得しつつ、化学状態解析を含めた層構造の推定が可能。
事例3;SUS304表層の化学状態評価
前項2.アルミの深さ方向化学状態評価事例と同様、HAXPES装置のX線源とサンプルとの角度を変え、Cr2p3/2スペクトルの化学結合状態の変化を比較した測定例を示します。

事例4;TiO粉末試料表面のTi価数評価
チタン板の評価に対し、ここでは酸化チタン(TiO)粉末の表面状態を評価した事例を示します。TiO粉末の最表面は酸化されTiO2の皮膜状態となっています。

事例5;Al-Cu合金での元素ピーク干渉回遊の評価
HAXPESは高エネルギーのX線を使用するため、従来のXPSでは検出不可能であった深い内殻軌道の電子を励起できます。従来XPSでは検出エネルギーが近接しており、元素ピークの干渉により分離区別しづらかった課題をHAXPESでは1sスペクトルを利用することで回避できます。
