電子線後方散乱回折法(EBSD)
EBDS; Electron Backscatter Diffraction
電子線後方散乱回折法(EBSD)とは
電子線後方散乱回折法(EBSD);Electron Backscatter Diffractionは走査型電子顕微鏡(SEM)に搭載されている検出器の一つであり、電子回折に伴って発生したEBSD(菊池)パターンを取り込み・解析することで様々な組織分析が可能な評価方法です。
電子線後方散乱回折装置(EBSD)

電子後方散乱回折法(EBSD)の特徴
- EBSDの空間分解能はナノオーダ(約50~100nm)と非常に高いです。
- 取得した測定データを解析することで様々な情報が得られます。
(1) 配向性(結晶方位マップ)
(2) 結晶相の分布
(3) 組織(結晶粒の形状、粒径、分布)
(4) 結晶粒界解析
(5) 歪み評価 - アタッチメントを用いることで、In-Situ測定(加熱・機械試験)や高分解能測定(透過EBSD)の評価可能
電子後方散乱回折法(EBSD)の原理
SEM筐体内で試料を70°傾斜し、その表面に電子ビームを照射することで、 Braggの法則(λ=2dsinθ)による回折(菊池)パターンが得られます。
菊池パターンは結晶構造や結晶方位によって異なるため、このパターンをHough変換法でバンドを検出して、対象物質の結晶情報とフィッティングすることで、結晶方位を決定します。

電子後方散乱回折法(EBSD)の適用分野(用途)
結晶性材料全般
- 金属材料:鉄系材料(ステンレス等含む)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)基超合金
- セラミックス:石英(SiO2)、アルミナ(Al2O3)
- 半導体材料:シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、酸化ガリウム(Ga2O3)
- その他:酸化物、窒化物 等
装置仕様
装置 | ショットキー電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM) |
測定倍率 | 10~30000倍程度 |
測定領域 | 最大20mm×7mm |
試料サイズ | Φ32mm×15mm以下 |
電子後方散乱回折法(EBSD)の事例
事例1;2相ステンレス鋼のEBSD/EDS同時測定
EBSDに加えてエネルギー分散型X線分光装置(EDS)も用いて同時に測定を行うことで、結晶構造と元素情報が取得することが可能です。

事例2;パーライト鋼の損傷に伴う組織変化(微小方位差による歪み評価)
EBSD解析の一つである微小方位差マップ(KAM等)を用いることで、定性的に塑性歪の評価を行うことが出来ます。事例はパーライト鋼における損傷前後の結果となっており、損傷後ではKAMマップの値が大きくなっています。
