グロー放電発光分析(GD-OES)
GD-OES;Glow Discharge Optical Emission Spectroscopy
グロー放電発光分析(GD-OES)とは
グロー放電プラズマを原子の励起・電離源として、原子発光スペクトルを解析し、試料表面から深さ方向の分布を得る事ができる分析手法です。水素を含む、ほぼ全ての元素を迅速に測定する事ができます。
グロー放電発光分析(GD-OES)の特徴
- H, C, O, Nなどの軽元素からUまでの多元素同時分析が可能。
- 標準試料を用いることで、深さ方向の元素濃度分布調査が可能
- マーカス型グロー放電の採用により、数nmレベルの深さ方向分解能(試料形状・マトリクスによる)で薄膜分析が可能
- 高速スパッタリングが可能なため、数10μm程度の厚い皮膜でも迅速にスパッタが可能。そのため、表面、界面、バルク組成の同時分析が可能。
- 高周波方式グロー放電により、非導電性材料(酸化膜・セラミックス・ガラス等)の深さ方向分析も可能。
- 測定前の化学的処理が不要のため、迅速分析にも対応可能。
グロー放電発光分析(GD-OES)の適用例
- 酸化物層のスケール調査・酸化物層内の元素分布調査
- 窒化物層・炭化物層の調査
- めっき材の膜厚・界面元素調査
- 金属材料の添加元素・不純物元素調査
- 非導電性材料(セラミック・ガラス等)の元素分布調査
装置仕様
型式 | マーカス型高周波グロー放電発光分析装置 GD-Profiler2 HORIBA製 |
検出器 | 光電子増倍管(Photomultiplier) |
分光器 | ポリクロメータ―(45元素) モノクロメーター(1波長) |
放電径 | Φ4mm *オプション使用によりφ1mm、φ2mmも可 |
測定深さ | ~200μm(材質・測定領域により異なる) |
感度(検出下限) | 数10ppm~ (元素・試料による) |
サンプル仕様
適用試料 | 導電性材料、非導電性材料 |
試料形状(通常) | 平板 *最小:10mm角・径、最大:150mm角・径 |
試料形状(オプション使用) | 1)治具の使用 2)金属インジウム(In)への埋込みによって、10mm角・径以下の試料も対応可能 |
グロー放電発光分析(GD-OES)の原理
Arイオンの衝突により試料表面をスパッタリングし、放出された原子をプラズマ中で励起させます。励起状態の原子が緩和する時に放出される光(波長が元素固有)を集光レンズで集光し、光電子増倍管で検出して強度を濃度に換算します。基本的に試料は平板形状を対象としていますが、事例に示す通り種々の試料形状に対応しています。
測定元素
ポリクロメータ―で測定可能な45元素を以下に示します。
また、モノクロメーターを用いることにより、特定波長を狙った測定が可能(ただし、モノクロメーターでの測定の場合、測定元素含有の標準試料が必要です)。
グロー放電発光分析(GD-OES)の事例
事例1; 酸洗・焼鈍後Ti材の表面元素分布調査
金属元素の他、酸素や水素等の軽元素の分布も調査可能です。
事例2; 10mm角・径以下の試料の測定1(スモールサンプルキット)
スモールサンプルキット使用時の測定部
スモールサンプルキット概略図
特徴
- 試料サイズ4mmφ~20mmφで測定が可能
- 試料全体の真空引きが可能
事例3; 10mm角・径以下の試料の測定2(インジウム埋込み)
インジウム包埋キット使用時の測定試料
特徴
- 試料サイズ4mmφ~15mmφで測定が可能
- 4mmφのサイズで測定すれば、スパッタ部周辺からのリークを低減
事例4; 大気非暴露での測定(トランスファーベッセル)
トランスファーベッセル使用時の測定部
トランスファーベッセル概略図
特徴
- 試料サイズ10mmφ~50mmφで測定が可能
- 試料全体をAr雰囲気にすることが可能
測定例
事例5; 湾曲試料の測定
GD-OES アノード部(非平滑用)
特徴
- 試料成形不要で、測定が可能