X線トポグラフィ解析(XRT)

X線トポグラフ(XRT)とは

X線トポグラフ(XRT)とは、結晶内の欠陥(表面欠陥、積層欠陥、転位等)や歪みなどの分布や形などを、2次元マッピング情報(画像)として撮影・観察する方法です。

X線トポグラフ(XRT)の外観


XRTmicron内部

X線トポグラフィ解析(XRT)の適用分野

X線トポグラフィ解析(XRT)の原理

X線源から出たビームをスリットでシート状に絞り、試料表面にブラッグの回折角で入射させます。ブラッグ回折条件に対応した回折ビームだけを拾い出し、検出器に照射・露光させます。この状態でサンプルを全領域スキャンさせると、サンプル全体の回折像が検出系に投射されることになります。

X線回折画像(トポグラフ画像)の濃さはX線回折強度の増加とともに増します。サンプル母材領域(単結晶)のトポグラフ画像は、動力学的回折による回折X線強度に対応した濃さとなります。

局所的な欠陥部位では、運動力学的回折により回折X線強度が母材領域に比べて増加することになり、欠陥部位はコントラスト差(色の濃淡)としてトポグラフ画像上で撮影・識別されることになります。

撮影モードとしては、試料の厚み全体を観察する透過トポグラフ、試料の表面近傍のみを観察する反射トポグラフ、欠陥の3次元構造が分かる3Dトポグラフがあります。

装置仕様

XRT-300

XRTmicron


XRT-300

XRTmicron

サンプル仕様

対象材料

サンプルサイズ

直径: 最大300mm
厚さ: 
・反射トポグラフの場合;最大10mm
・透過トポグラフの場合(但し材料により異なる);最大2mm

サンプル状態(厚さ、結晶性、その他)により、適正な機器、撮影モードを選択して撮影します。

X線トポグラフィ解析(XRT)の事例

事例1;Siのスリップ転位評価(透過トポグラフ)

写真は8インチ(200mm)Siウエハに発生したスリップ転位をXRT-300で評価した事例です。熱処理によってウエハ保持部を起点に導入されたスリップ転位が白い線状のコントラストとして観察されます。

事例2;Siエピタキシャルウエハのミスフィット転位評価(透過トポグラフ)

写真は6インチ(150mm)Siウエハに発生したミスフィット転位をXRT-300で評価した事例です。エピ層と基板の格子定数に差がある場合、格子歪を緩和するため、エピ層と基板の界面付近にミスフィット転位が導入されます。透過トポグラフ像で見られる縦横に伸びた白線がミスフィット転位に相当します。

事例3;Siのスリップ転位評価(反射トポグラフ)

写真は8インチ(200mm)Siウエハに発生したスリップ転位をXRTmicronで評価した事例です。透過トポグラフ像でスリップ転位が見えている領域を反射トポグラフで観察すると、縦横に並ぶ黒い点状のコントラストが確認できます。これは、スリップ転位がウェハ表面に貫通した箇所に相当します。

事例4;Siのスリップ転位評価(3Dトポグラフ)

写真はSiウエハに発生したスリップ転位の3Dトポグラフ評価事例です。3Dトポグラフは透過トポグラフの一種で、欠陥の3次元構造を立体的に観察できます。左側の透過トポグラフ像の一部を3Dトポグラフ観察すると、転位がウエハの厚み方向に伸びて表面に抜ける様子が確認できます。

事例5;SiCの転位評価(透過トポグラフ)

写真は4インチ(100mm)SiCウエハ中の転位、積層欠陥をXRTmicronで評価した事例です。XRTmicronではウエハ全面の高解像度な欠陥像が取得できます。本事例では、透過トポグラフ像の一部を拡大すると積層欠陥や基底面転位が確認できます。

事例6;SiCの転位評価(透過トポグラフ)

写真は3インチ(75mm)GaAsウエハ中の転位をXRTmicronで評価した事例です。Gaの様にX線の吸収が大きい元素を含んだ結晶の場合でも、転位密度が下がって完全結晶に近くなると、X線の異常透過が起こってウエハ内部の観察が可能になります。このウエハの転位密度は1×103/cm2台ですが、転位が白い線状コントラストとして観察されます。

事例7;LiTaO3の欠陥評価(反射トポグラフ)

写真は4インチ(100mm)LiTaO3ウエハ中の欠陥をXRTmicronで評価した事例です。反射トポグラフ像で見えている黒い線状のコントラストは小傾角粒界に相当します。

事例8;β-Ga2O3の転位、ナノパイプ評価

写真はβ-Ga2O3中の結晶欠陥である転位、ナノパイプの評価事例です。図1の反射X線トポグラフで見えている[102]、[100]方向に伸びた黒いコントラストの位置には、図2で見られる様なエッチピット列が見られます。

反射X線トポグラフ像とエッチピット列

エッチピット部のTEM観察

図2のエッチピット位置から断面サンプルを作成しTEM観察した結果、図3の様な転位が確認できました。g=-202で転位コントラストが消滅することから、この転位のバーガースベクトルは[010]方向です。転位の方向とバーガースベクトルの方向が並行なので、この転位はらせん転位です。

中空パイプ(ナノパイプ)のTEM観察

図2で見られるエッチピットの他に、図5に示す様なサイズが大きくて低密度のエッチピットが存在します。断面TEM観察の結果、このエッチピット下には幅が0.1μm程度の中空パイプ(ナノパイプ)が確認できました。

出展:Jpn. J. Appl. Phys. 54, 051103 (2015)

参考技術資料

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