超音波衝撃処理技術(UIT)
UIT:Ultrasonic Impact Treatment
超音波衝撃処理技術(UIT)とは
超音波衝撃処理技術(以下UIT:Ultrasonic Impact Treatment)は、鋼構造物の溶接部の止端部に本処理を実施することで、疲労き裂の発生を抑制することができます。従来のグラインダー処理による疲労き裂抑制手法と比較すると、疲労き裂抑制効果が高く、さらに処理速度や施工コストを大幅に削減することが可能です。その結果、鋼構造物の疲労破壊を予防あるいは低減をはかることができます。
超音波衝撃処理技術(UIT)の適用分野
主な適用先は、船舶、建設機械、橋梁、クレーン、クレーンランウェイガーターなどで疲労強度が要求される構造部材です。
超音波衝撃処理技術(UIT)の利活用
<圧縮残留応力の付与>
- 溶接による引張残留応力をなくし、圧縮残留応力に変えます。
- ショットピーニングよりも簡単な処理で、より強力な残留圧縮応力を実現します。
<応力集中の軽減>
- 溶接止端部の形状が丸くなり、応力集中が軽減されます。
- グラインダー処理よりも高能率に処理ができます。
<表面硬度向上>
- 金属組織が微細化します。
装置仕様
ハンドツール | 周波数 | 27kHz |
質量 | 3.8kg | |
ジェネレーター | 定格 | 100~200V/50/60/Hz/1400W |
寸法 | 220(W)×462(D)×291mm(H) | |
重量 | 20kg | |
クーラー | 定格 | 100Vまたは200V/50/60/Hz/700W (推奨200V) |
寸法 | 230x230x660mm | |
質量 | 15kg |
超音波衝撃処理技術(UIT)の事例
UITによる疲労き裂補修技術
UIT(Ultrasonic Impact Treatment)技術は、溶接止端部を直径3mmのピンで打撃し、鋼材表面に圧縮残留応力を与えることで、疲労強度の向上を図るものです。これまでも橋梁、船舶、鉄道などの溶接構造物で予防保全対策として用いられています。
鋼製橋脚の疲労き裂は、従来、磁粉探傷試験でき裂を確認しながら,グラインダーで切削除去し、肉盛り溶接によって補修されていました。これに対し、UIT技術を使用することによって、作業コストを大幅に低減可能なき裂補修の新技術を提供します。
補修対象箇所
本技術による補修対象は、鋼I桁橋の下横溝ガセットプレートのまわし溶接部の止端部に留まっているき裂です。
UITによる補修方法
溶接止端部をき裂の上からUITで打撃します。これによって、 従来の補修方法に比べ,高度な技能を必要とせず、施工が比較的容易となります。
補修メカニズム
き裂表面を圧着し、き裂先端部の応力集中が緩和されるとともに圧縮残留応力が導入されることにより、き裂の進展を防止します。
予防保全対策への適用
き裂補修だけでなく、同時に予防保全対策としてき裂の発生していない箇所も施工することで、従来の予防保全対策(例えば、当て板補強)に比べて、大幅な施工時間短縮とコスト削減が可能となります。