腐食環境調査

腐食環境調査とは

橋梁、鉄塔、発電設備、プラント、建築などインフラ鋼構造物、自動車、車両、船舶など移動体の鋼製躯体や鋼製部品は、安心・安全、カーボンニュートラルの観点から長期耐久性が求められています。とくに既設については老朽化対策による長寿命化、更新・新設では長期耐久性に優れた技術を採用するなどの腐食劣化対策が行われます。これら鋼構造物・移動体の腐食劣化は、海塩・融雪塩、寒暖、結露や風雨・降雪、腐食性ガス、太陽光などの影響を受けて進行するため、実際に供用される環境の腐食性を測定することが重要です。
現場や移動体などの腐食劣化対策に資する腐食環境調査、具体的には飛来塩分測定、付着物分析、温度・湿度測定、大気腐食センサーによるモニタリング測定、モニター試験片による腐食調査などを行います。これらを計画段階あるいは既設後の追跡調査として実施可能です。

腐食環境調査の特徴

腐食技術者が現場に赴いて腐食環境測定用のセンサー類や捕集器具の設置し、一定期間後に回収して、データ解析を行います。

腐食環境調査の適用分野

腐食状況の数値化(腐食量を時間関数として評価)

腐食量を継続的に測定することにより、腐食量を時間関数として表すことができます。

W=atn

ここで、W は腐食量、t は時間、a は単位時間あたりの腐食量、n は指数。

腐食量の許容限までの期間を設計寿命とすると、t を設計寿命まで外挿したとき、

腐食量の許容限 > 推定腐食量 Westimated

であれば設計寿命まで供用可能と考えられます。

実際の鋼構造物等の場合には、各部位ごとの腐食量測定や腐食環境因子量を測定します。具体的には、腐食量測定は非破壊板厚測定、曝露試験片による腐食量測定、腐食センサーによる腐食速度推定などによって行います。
また、腐食環境因子である、温度・湿度、濡れ時間、大気汚染物質である海塩粒子量や硫黄酸化物量を測定することにより、環境腐食性を定量し、腐食量推定の一助となります。

※ご要望に応じて最適な頻度や期間、手法をご提案致します。

腐食カテゴリー評価

(1)モニター試験片の腐食量からの腐食カテゴリー評価

モニター試験片を1年間暴露して、腐食量を測定します。腐食量により腐食カテゴリーの評価ができます。

表.モニター試験片による腐食カテゴリー評価(ISO9223:2012)
カテゴリー 腐食性 炭素鋼 亜鉛 アルミニウム
C1 Very low rcorr≦10 rcorr≦0.7 rcorr≦0.9 negligible
C2 Low 10<rcorr≦200 0.7<rcorr≦5 0.9<rcorr≦5 0.1<rcorr≦0.6
C3 Medium 200<rcorr≦400 5<rcorr≦15 5<rcorr≦12 0.6<rcorr≦2
C4 High 400<rcorr≦650 15<rcorr≦30 12<rcorr≦25 2<rcorr≦5
C5 Very high 650<rcorr≦1500 30<rcorr≦60 25<rcorr≦50 5<rcorr≦10
CX Extreme 1500<rcorr≦5500 60<rcorr≦180 50<rcorr≦90 10<rcorr
※腐食度 rcorr;単位 g/(m2・y)

(2)環境測定による腐食カテゴリー評価

腐食環境因子を1年間測定します。腐食環境因子の測定結果に基づいて、各材料の腐食カテゴリーの評価ができます。

表.環境測定による腐食カテゴリ評価例(ISO 9223:1992)
ぬれ時間[h/a] 海塩粒子量*
[mgCl-/m2/d]
硫黄酸化物量
[mgSO2/m2/d]
腐食カテゴリー
炭素鋼 亜鉛、銅 アルミニウム
4のとき)
2500~5500
0~60 10~35
35~80
80~200
C3
C4
C5
C3
C3,C4
C4,C5
C3
C3,C4
C4,C5
60~300 10~35
35~80
80~200
C4
C4
C5
C4
C4
C5
C3,C4
C4
C5
300~1500 10~200 C5 C5 C5
*ウェットキャンドル法

腐食量測定に用いる装置・設備

モニター試験片(ワッペン試験片、小試験片、標準試験片、参照試験片)

実際に使用されている材料を基本とし、比較のため参照試験片として、炭素鋼、亜鉛、銅、アルミニウム、ステンレス鋼なども併用する。


一定期間後の炭素鋼の外観
(設置部位が異なる)

大気腐食センサー


センサー例 ACM(Atmospheric Corrosion Monitoring)型センサー

ACMセンサーの出力例
(出典;押川渡; 材料と環境, 67, 273-279 (2018))

その他のセンサー類や捕集器具

温度・湿度センサー

海塩粒子付着量測定(土研式,ドライガーゼ法)

硫黄酸化物量測定(JIS二酸化鉛法による硫黄酸化物付着量測定)

腐食環境調査の事例

ある工場敷地内の腐食環境を調査し、また敷地内各部位の侵食量を測定することによって、侵食量が付着塩分量と概ね相関することが確認されました。


データ解析例
(出典;井上博之, 松村浩行, 小森一夫, 小野雅史, 朝倉亮;材料と環境, 69, 175-179 (2020))

公的規格

ページトップ お問い合わせ