拡散性水素分析

拡散性水素分析とは

拡散性水素分析は、鋼材の水素脆化の原因を究明するため、鋼の欠陥(転移や析出物など)や環境から侵入してトラップされた常温程度でも容易に動ける拡散性水素を把握する分析です。トラップサイトの多い高強度鋼には重要な指標となる評価手法であり、拡散性水素と非拡散性水素の分離に適した分析手法になります。
昇温脱離法(Thermal Desorption Analysis:TDA)による水素放出曲線から加熱温度域の違うピークが得られ、拡散性水素と非拡散性水素の分離評価を行います。

拡散性水素分析装置

拡散性水素分析の適用分野

拡散性水素分析の原理

ガスクロマトグラフィ-(Gas Chromatography:GC)を用いて、微量水素の測定を可能としています。試料を管状炉石英管にセットし、アルゴン(Ar)をキャリアガスとして一定の昇温速度で設定温度まで加熱します。加熱中に放出された水素がカラムで分離され定量化されます。検出器には熱伝導度検出器(Thermal Conductivity Detector:TCD)を用いており、水素の検量線を作成することで定量します。

拡散性水素分析で得られるデータ

一定の昇温速度で一定時間毎にサンプリングを行うため、得られるデータは各温度(°C)に対する水素放出速度(mass ppm/min)になります。また、1次ピークから求めた拡散性水素量(mass ppm)を算出します。


図 水素放出曲線

装置仕様

サンプル仕様

拡散性水素分析の事例

事例1; 活性化エネルギーの算出

昇温速度φを変化させることで、ピーク温度Tpが変化します。拡散過程に支配されず、トラップサイトの乖離律速と仮定して活性化エネルギーを算出します。
水素トラップの活性化エネルギーを算出することで、水素-トラップサイト間の結合エネルギー一覧から金属材料中の主なトラップサイトが推察可能になります。

●昇温速度φを変化させピーク温度Tpを測定


図 水素放出曲線

●拡散過程に支配されずトラップサイトの乖離律速と仮定


図 活性化エネルギーEaの算出

参考技術情報

参考技術資料

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