ステンレスの鋭敏化を検出する粒界腐食試験

酸・アルカリ溶液中での腐食形態には全面がほぼ均一に腐食していく全面腐食と、腐食が局部的に集中して起こる局部腐食があり、実プラントでの腐食トラブルは局部腐食に起因することが多くあります。局部腐食には粒界腐食、孔食・隙間腐食、異種金属接触腐食などがあり、ここでは粒界腐食の評価法について紹介します。

また、ステンレス鋼の溶接熱影響部(HAZ)は、実環境下でしばしば鋭敏化によって粒界腐食を起こします。鋭敏化は粒界腐食のみならず孔食・隙間腐食や応力腐食割れ(SCC)等の局部腐食感受性を高める原因となります。鋭敏化を検出する代表的な粒界腐食試験法をご紹介します。

粒界腐食とは

オーステナイト系ステンレス鋼を500~800°Cに保持すれと結晶粒界にクロム炭化物(Cr23C6)が生成して隣接部分のCr量は減少し、Cr欠乏層が形成される。鋼にこのような状態をもたらす処理を鋭敏化処理という。鋭敏化した鋼を酸性溶液中に浸漬すればCr欠乏層が著しく腐食され脱粒する。この現象を粒界腐食といいます。

粒界におけるCr欠乏層


粒界におけるCr欠乏層

1.シュトラウス試験(硫酸・硫酸銅腐食試験)

沸騰硫酸・硫酸銅水溶液中に試験片を16時間浸漬し、試験後90°以上曲げて粒界に割れが生じるか否かを調べ、クロム欠乏層の有無を検出します。銅片を接触させた状態で浸漬することによりステンレス鋼の自然電位を活性化電位に安定するので、比較的短時間で完了でき、広く用いられています。

JIS規格/ASTEM規格;G 0575/A262-E
評価項目;腐食・曲げ後の粒界割れの有無

2.ヒューイ試験(65%硝酸腐食試験)

沸騰65%の硝酸浸漬によりステンレス鋼の電位を過不働態に近い高電位に保持し、クロム炭化物及びシグマ相の析出による粒界腐食感受性を調べるもので、他の方法ではわからないシグマ相析出に起因する粒界腐食が検出できます。

JIS規格/ASTEM規格;G 0573/A262-C
評価項目;腐食減量

3.ストライカー試験(硫酸・硫酸第二鉄腐食試験)

沸騰50%硫酸に硫酸第二鉄を添加した液中に120時間浸漬し、腐食減量を測定る方法で、比較的純粋にクロム欠乏に起因する粒界腐食感受性を検出できます。

JIS規格/ASTEM規格;G 0572/A262-B
評価項目;腐食減量

4.しゅう酸エッチング試験

バフ研磨した試験面を陽極として10%しゅう酸溶液中に入れ、 1A/cm2の電流で90秒間電解した後、エッチング組織を分類して鋭敏化の程度を調べます。

JIS規格/ASTEM規格;G 0571/A262-A
評価項目;粒界のエッチング状態、ピット状態

5.EPR試験(電気化学的活性化率測定)

KSCNを含む硫酸水溶液中で、活性域から不働態域まで速い電位走査速度で往復分極させ、往復時のピーク電流の大きさを計測して試験片の鋭敏化の程度を調べます。

JIS規格;G 0580
評価項目;往路と復路のピーク電流比

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