第一原理計算によるXAFSスペクトル解析(リチウムイオン電池正極材への適用)
RSM-2601
概要
XAFSスペクトルの解析に計算機シミュレーション技術を適応する事で、参照物質の無い試料であっても詳細な化学結合状態解析が可能になります。
特徴
XAFSスペクトルから試料の化学状態を同定するには、標準試料や既存のデータベースを用いてスペクトルの形状やピーク位置を比較解析する、指紋認証的解析が行われています。そのため、標準試料が入手できない場合は同定不可となることがあります。そのようなケースでは、第一原理計算※1に基づく計算機シミュレーションにより得られた理論計算スペクトルを、解析に利用する事が有効となります。
※1 第一原理計算;実験で得られたパラメータを用いずに量子力学等に基づく方程式を計算する手法
●計算スペクトルの利用が有効なケース
元素の置換や欠損、反応の中間生成物、その場測定した反応途中の状態など
2.結晶構造モデルを元に、第一計算原理を使い試料の化学状態を推定する方法
推定される化合物の結晶構造モデルを元に第一原理計算を行い、実測値と計算値のスペクトルを比較し、試料の化学状態を推定する解析フローをご紹介します。
- 1)実測データを元に、想定される化合物の結晶構造モデルを構築
2)モデルを元にXAFSスペクトルをシミュレーション
3)計算結果を実験結果と比較し、必要に応じ構造モデルに修正を加える
3.評価事例;リチウムイオン電池正極材の解析
充放電を繰り返して劣化したリチウムイオン電池正極材中のCoについてXAFSスペクトルを測定し、劣化前後の化学結合状態を解析しました.
結果
・図1に、第一原理計算を行うために想定した正極材(LiCoO2)結晶構造モデルAとモデルBの二つのモデルを示します。
・図2の左図a)に、充放電による劣化前後の実測XAFSスペクトルを示します。右図b)に、図1に示した正極材(LiCoO2)結晶構造モデルAとBの二つのモデルの計算データXAFSスペクトルを示します
その結果、
・劣化前の実測スペクトルは、右図に示す正極材(LiCoO2)の結晶構造”モデルA”の計算結果とよく一致
・劣化後の実測スペクトルは、右図に示す正極材(LiCoO2)の結晶構造”モデルB”の計算結果とよく一致
このことから、劣化した正極材の結晶構造は、LiCoO2のc軸が延びてa軸が縮み、Liイオンが離脱した状態である事が分かりました
参考技術資料
FTM-2104 放射光を利用した化学状態解析(XAFS)によるクロメートの化学状態解析
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