誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)

ICP-MSは溶液(*1)に含まれる元素濃度を最も高感度、且つ多元素同時に分析できる装置で、超微量域での汚染量が重要視される半導体分野などにおいて高いパフォーマンスを発揮します。また、トレーサビリティの確保された標準溶液(液体の標準物質)との比較によって濃度化(定量分析)を行なうことから、様々な材料への適用も容易です。一方で、信頼性の高い分析結果を得るためには、適切な試料前処理方法の選択と微量分析に特化した操作技術がとても重要になります。当社では、30年以上に渡り半導体業界で微量分析を行ってきた豊富な実績に基づき、最適なソリューションの提案と信頼性の高いデータの提供が可能です。

(*1)固体試料のまま直接導入する方法もあります。(LA-ICP-MS)

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)の特徴

  1. 1)検出感度が高く、微量不純物の定量に適す(ICP-OES分析の数100倍~数1000倍の高感度測定)
  2. 2)多元素同時測定が可能(迅速な定量、定性分析が可能)
  3. 3)標準溶液から検量線の作製が可能なため、信頼性の高い分析結果が得られる
  4. 4)微僅かな試料重量でも定量分析が可能(高感度を活用)
  5. 5)同位体比測定が可能

測定対象元素

測定対象元素

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)の適用分野(用途)

シリコン系及び石英材料

・シリコン系材料の不純物分析(単結晶、多結晶、SOG級、MG級など):事例2(1)
・石英材料の不純物分析(合成、溶融、人工水晶、硅砂など)
・表層不純物分析(ウエハ、石英製フォトマスク基板など)
・化学的溶解法を用いた深さ方向分析:事例1

ファインセラミックス

・セラミックス中の不純物分析
・セラミックスの表層汚染量調査(SiCウエハなど)

電池(LIB、燃料電池)

・電池部材(原料~解体後)、材料の評価試験
・電気化学試験後の電解液分析:事例2(2)

金属材料、無機材料、有機材料、複合材料

・金属材料中の不純物分析
・黒鉛粉末の不純物分析:事例2(3)
・セラミックス/金属複合材料の分析

雰囲気、気体・ガス

・クリーンルーム雰囲気の分析
・各種ガス中の不純物分析:事例2(4)
・燃焼ガス中の元素分析

その他

・微小量試料の分析:事例2(5)
・Bの同位体比分析(外為法対応)
・医薬品の元素不純物分析(ICHQ3D対応)
・食品中の微量重金属元素分析:事例2(6)
・クリーン用品・部材の評価(耐薬品性試験、溶出試験など)
・考古遺物の分析、Pb同位体比の分析

サンプル仕様

状 態 材 質 試料量目安*
固 体 金属、セラミックス、炭素材、樹脂類 等 10g
液 体 水、酸、アルカリ、有機溶媒、油類 等 100mL
気 体 ガス、環境雰囲気、燃焼ガス 等 ご相談
*上記以外の場合でも対応可能です。(ご相談下さい)

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)の原理

液体などの試料を高温の誘導結合プラズマ(ICP)に導入すると、その中に存在するほぼ全ての元素(原子)は励起してイオンになります。イオン化した原子は質量分析計(MS)で質量数(質量電荷比:m/z)の違いよって分離・選別された後、検出器に到達したイオン数が信号強度として計測されます。ICP-MSでは、検出したイオンの質量数情報から定性分析が、信号強度から定量分析を行うことが可能です。

ICP-MSの基本構成

ICP部

 ICP-MSの基本構成1
4種の試料導入系
  1. 1)一般水溶液導入系 :水溶液系の測定
  2. 2)フッ化水素酸試料導入系 :フッ化水素酸を含む水溶液の測定
  3. 3)有機溶媒試料導入系 :有機溶媒のまま測定
  4. 4)レーザーアブレーション :固体試料のまま測定

質量分離部

 ICP-MSの基本構成2
1)四重極型ICP-MS(ICP-QMS,  ICP-QQQ(MS/MS))

汎用性の高いICP-MSです。質量分解能が低いため、共存成分の質量干渉(多原子イオン、同重体イオンなど)によって正確な測定ができない場合があります。しかし近年では、優れた干渉低減機構を搭載した装置が主流となっているため、多くの場合で干渉イオンの影響を排除した測定が可能となっています。

2)二重収束型ICP-MS(HR-ICP-MS)

質量分解能の高いICP-MSです。磁場と電場を利用した質量分離法により、目的イオンと妨害イオンの僅かな質量差(m/z=最大0.001)を利用して分離することが可能です。四重極型ICP-MSで干渉イオンが排除しきれない測定対象イオンにおいても高感度測定が可能です。(但し、装置スペックを維持するために使用方法は限定的)

保有ICP-MS(クリーンルーム内に設置)

保有ICP-MS

誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)の事例

事例1;化学的溶解法を用いた合成石英ガラスの深さ方向分析

半導体製造工程で使用される材料では、深さ方向の濃度分布が汚染の原因や範囲を推察する上でとても重要な指標の一つとなります。一方で、GD-OESやSIMSに代表される深さ方向分析装置では、感度が不足するといった問題や、測定エリアが小さいため代表性に欠けるという課題があります。これらの課題を解決する技術として、当社では化学的溶解法を用いた深さ方向分析を実施しています。薬液と試料の反応速度を制御することで、指定深さの溶解・評価が可能となります。事例1では、Siウエハのアニール炉に使用される合成石英ガラス管の深さ方向分析事例を紹介致します。


図 試料の断面拡大模式図と測定エリア

図 合成石英ガラスの深さ方向分析結果

■結果
分析の結果、石英ガラス管は最表面が最も汚染されていることに加え、熱拡散によりガラス内部にまで汚染の影響が及んでいることが判りました。また、100µm付近では不純物レベルが母材と同程度(1ppb未満)まで低下することから、汚染の影響範囲を見積もることが出来ました。以上のことから、今回の使用品を再利用するためには、表面層100µm以上を洗浄除去すれば良いという指標が得られました。

事例2;各種試験結果例

(1)多結晶シリコンの表層不純物分析

チャンク片の表層0.5%を溶解して分析しました。

(2) 集電箔材の電気化学試験

電気化学試験(サイクリックボルタンメトリー)後のLIB電解液を分析しました。

(3) 黒鉛粉末中の金属不純物分析

高純度黒鉛粉末を低温灰化法にて前処理を実施して分析しました。

(4)アセチレンガス中の金属不純物分析

市販ボンベのガス中不純物を水溶液で捕集して分析しました。

(5)微少量試料(10mg)の分析

当社販売中の青銅標準試料を微少量採取して前処理を実施して分析しました。

(6)食品中の微量重金属分析

試料:NIST CRM No.10-C(玄米)
マイクロ波試料分解装置(酸分解)にて前処理を実施して分析しました。

公的規格(JIS)

参考技術資料

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