前処理環境(クリーンルーム)

クリーンルームとは

化学分析を行う場合には、試料を測定手法に適した状態(多くは溶液)に『前処理』することが必要です。化学分析で正しい結果を得るためには、測定装置だけでなく、適切な前処理手法を選択する知見や技術力が重要です。
しかし、微量域で正しい分析結果を導くためには、それらに加えて”作業環境”も重要な要素となってきます。『清浄な管理空間』で、『目的に沿った手法』を選択し、『高い技術力』で前処理を行うことにより、微量分析は成立します
本頁では、含有不純物分析、付着不純物量の調査などで使用する微量分析用の前処理環境や設備の一部について紹介致します。

クリーンルームとは「浮遊粒子濃度が制御されており、室内における微小粒子の流入、生成及び停滞を最小限にするように建設され温度・湿度・圧力などが必要に応じて制御されている部屋」とISO14644-1に定義されています。

当社のクリーンドラフトは化学分析用として一般的な旧米国規格分類のクラス100ですので、1立方フィート当たり0.5µm以上の粒子数が100個以下という仕様になっています。

一般大気の100万個/cf3に比べると格段に清浄度は高いものの、『汚染を限りなく低減する』という観点からは十分とは言えません。従って、正しい分析結果を得るためには、クリーンルームを正しく維持・管理するだけでなく、前処理に使用する器具の選定や密閉系前処理装置の活用など、汚染を防止するための様々な工夫が重要となってきます。

保有設備

設備名称 特徴
クリーンルーム 6室 クラス1000(旧米国連邦空気清浄度基準)
クリーンドラフト 9台 クラス100(旧米国連邦空気清浄度基準)
超純水製造装置 12台 1次処理:ろ過、RO処理、EDI処理など
2次処理:イオン交換処理、吸着除去処理、精密ろ過など
設備名称 用途 特徴
黒鉛製ホットプレート ビーカーを用いた試料の分解 汚染要素の少ない加熱器具(金属レス)
黒鉛製非沸騰蒸留・濃縮装置 溶液の蒸留・濃縮 同上
マイクロ波試料分解装置 有機物などの試料分解 密閉系で試料の分解が可能
低温灰化装置 炭素系材料や樹脂の灰化 低沸点金属の揮散を防止
電解装置 金属中の介在物・析出物分析 微量析出物分析に対応
気化分離分析装置(Si用) 微量Si分析用 各種材料の微量Si分析に最適(特許取得)
乾燥器 加圧分解容器の加熱 セラミックスなどの微量分析
高温・高圧浸漬試験などに適用可能
エアサンプリングキット クリーンルームの定期管理など 空気中の微量元素を1ng/cm3まで評価可能

前処理環境(クリーンルーム)での測定事例

事例1;ふっ化水素酸の分析

市販の各種グレード試薬(ふっ化水素酸)に含まれる金属不純物量を測定した結果を表1に示します。
対象試薬をクリーンドラフト内で濃縮後、高分解能型ICP-MSで測定しました。

表1 高純度試薬(HF)中の金属不純物分析結果
試薬 Na
ppt(pg/mL)
K
ppt(pg/mL)
Fe
ppt(pg/mL)
HF ELグレード(電子工業用) N=1
N=2
72
69
130
130
50
51
100ppt保証試薬(A社) N=1
N=2
7
8
19
17
11
10
100ppt保証試薬(B社) N=1
N=2
1
1
2
2
5
6

同じ保証値の試薬でも、製造メーカーやロットによって金属不純物濃度に違いのあることが確認出来ました。このような濃度域の分析値を正しく比較するためには、清浄な環境(クリーンルーム)や高感度な分析装置が欠かせません。

事例2;クリーンルーム雰囲気の分析

半導体材料製造工場で製造された製品中のB(ほう素)濃度が高くなることがあったため、原因調査の一環として工場内の雰囲気(空気)を調査しました。図1に示すエアサンプリングキットで空気中の微粒子を液体に捕集して分析した結果を図2に示します。約1か月に渡りクリーンルーム内の空気を定点でサンプリングした結果、B濃度は日間で変動していることが確認されました。また、Bの濃度が一度上昇すると、低下するのに数日を要する可能性も示唆されました。

エアサンプリングキットの模式図

半導体製造工場内のB濃度の推移

公的規格

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