電界脱離質量分析法(FD-MS)

FD-MS:Field Desorption-Mass Spectroscopy

電界脱離質量分析法(FD-MS)とは

電界脱離-質量分析法(FD-MS)とは、分子構造を壊さずに分子を検出できる質量分析法で、高分子量でも精度良く分子量を推定することが可能です。
油類(タール類や重油含む)、合成高分子材料、添加剤等の分析に用いられ、分子構造や分子量に関する情報を把握することで、材料開発やトラブル原因究明を支援します。

FD-MS法の特徴

 FDでは高電界中で試料分子をソフトにイオン化するため、一般的な電子イオン化法(EI)と比較して、フラグメンテーションが起こりにくい特徴があります。
GC-MSと比較して、元の分子構造を残した状態で検出できるため、分子量を正確に推定することが可能です。概ね、10000程度までの質量数を分析対象としています。

FD-MS法の適用分野(用途)

FD-MS法の原理

試料をエミッター(約10μmΦのタングステンワイヤー表面に炭素ウィスカーが付着)に塗布し、イオン源部に設置します。高真空下でエミッターに印加する電流を上昇させながら、高電界と合わせて直接試料分子をソフトにイオン化し、質量分析計で質量スペクトルを取得し、分子の同定を行います。また、イオン化が起こる電流値も試料によって異なるため、分子種を特定する情報になります。

・FD-MS法のサンプリング

・FD-MS法のイオン化イメージ

・FD-MSのデータイメージ

★横軸は質量数、縦軸は強度を表します。この情報を元に、分子量を計算します。
★質量ピーク同士の間隔から、分子ユニットを解析します。
★整数質量と精密質量の差から、分子構造の規則性を抽出し、重合構造を解析します。

電界脱離質量分析法(FD-MS)の事例

事例1;ベース油の分子量変化

ガス化困難な高分子の真の分子量分布測定が可能です。試料間で分子量分布が比較できます。

事例2;PEG+PS混合溶液の解析例

ポリエチレングリコール(PEG)+ポリスチレン(PS)混合溶液試料を分析して規則性のある分子量分布を抽出し、ユニットの質量からPEG(NaおよびH付加イオン)とPSを色付けし明確化しました。

事例2

質量スペクトルを解析して、分子構造の規則性と分量分布を可視化したデータです。脂肪族骨格のPEGと芳香族骨格のPSで傾きに違いが認められます。

事例2

事例3;規格油の差異解析

メーカー違いの同じ規格油試料AとBにおいて、それらに含まれる副成分の違いを調べました。Kendrick Mass Defect(KMD)解析により、試料Aでは分子量分布は狭いですが末端基構造が多様である一方、試料Bは分子量分布が広く、末端基の種類が少ないことがわかりました。


試料AとBの差分マススペクトル

 

KMDプロット
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