重量法、容量法(滴定法)

近年の機器分析が発展する中、試料中の主成分の分析では、古典的な手法である重量法や容量法(滴定法)がよく使われます。また、標準物質の値付けや各種公定法では重量法をはじめとする基準分析法*はトレーサビリティの観点からも必要不可欠となっています。重量法や容量法(滴定法)は、熟練を要する為、当社では日々訓練を重ね、確実な技能継承を進めています。

*基準分析法(一次標準測定法)とは、対象とする特性値が測定の基本単位によって直接的に測定されるか,物理的又は化学的理論によって標準物質を用いないで間接的に関連付けられる分析方法。

1.重量法

重量法とは、定量しようとする成分を一定組成の純物質として分離しその質量又は残分の質量から対象成分の量を求める分析手法を言います。
(1)沈殿重量法(2)電解重量法があります。

(1)沈殿重量法

溶液に沈殿剤を加え,一定組成の化合物を沈殿生成させ,分離して秤量します。

【沈殿重量法 適用例】

沈殿重量法の特徴

沈殿重量法の対象試料

セラミックス・耐火物・セメント(シリカ・アルミナ・炭化ケイ素等)、鉄鉱石・スラグ・スラッジ、金属・合金(鉄鋼、アルミニウム、銅等)

必要試料量

固体・粉体 5g目安

(2)電解重量法

銅地金や銅合金の品質調査や種類特定において、主成分である銅の含有率把握が必要です。高精度分析方法として、電解重量法(JIS H 1051/1552/1101等)があります。
銅電解重量分析法は、電解によって試料溶液中のCu2+を電極上に金属銅として析出させ、その重量を測定して定量する方法です。硫酸酸性にした銅(II)溶液に白金板の陰極と白金線の陽極を入れ、攪拌しながら電圧をかけ電気分解を行います。

電解重量法の式

装置仕様

(株)ヤナコ機器開発研究所製 電解分析装置
・型式AES-2D
・定電圧電源方式 電解電圧;DC0~20V、電解電流;DC0~5Aの容量範囲で任意に調整可能。
・JIS方法に準拠した方法により定量可能。

電解分析装置の外観

電解分析装置 型式AES-2D
(株)ヤナコ機器開発研究所製 電解分析装置 型式AES-2D

必要試料量

5g~10g

重量法の事例

事例1:アルミニウム合金中のけい素(Si)定量

アルミニウム合金標準物質(MBH C55X)中のけい素定量を、重量法とICP-OES法の2つの分析手法で実施し比較を行いました。定量結果を以下に示します。

表1.アルミニウム合金標準物質(MBH C55X)による重量法とICP-OES法の比較

  定量方法 単位(%)
重量法 ICP-OES法
けい素認証値 10.1
平均値(N=10) 10.2 10.0
標準偏差 0.05 0.28

主成分(高含有成分)分析において、重量法は高精度で有効な分析手法です。

事例2:電解重量法による銅合金中銅定量

銅合金標準物質(BAM213)中の銅定量を、電解重量法にて実施しました。
・測定法 JIS H 1051 銅電解重量法(硝酸・ふっ化水素酸・ほう酸法)

表2. 銅合金 BAM213標準物質の銅分析結果

  単位(%)
電解重量 電解残液の
ICP-OES定量値
合計 認証値
との差
N=1 88.78 0.15 88.93 -0.06
N=2 88.84 0.21 89.05 0.06
N=3 88.75 0.11 88.86 -0.13
平均値 88.790 0.157 88.947 -0.04
標準偏差 - - 0.100 -
認証値     88.99  

電解終了後の電解液中に残留している微量の銅量を、ICP発光分光法(ICP-OES)により定量し電解析出重量に加える事により、精度の良い銅定量が可能です。

2.容量法(滴定法)

電位差滴定法は、電位的に平衡状態にある溶液に添加試薬を加えて生ずる化学反応を、基準となる比較電極に対する指示電極の電位差として検出して、はじめの溶液中の化学成分のうち反応に関与した成分の濃度を求める方法です。

分析対象成分と化学量論的に反応する滴定液の消費量を求め、その値から分析対象成分を定量します。容量法には、(1)錯滴定(キレート滴定)、(2)酸化還元滴定、(3)中和滴定 等があります。
また、従来型のガラス製のビュレットで試薬を滴下し指示薬の色の変化で終点を判断する方法と、自動で試薬滴下、終点判断し濃度計算までしてくれる「電位差自動滴定装置」を用いる方法があります。

容量法(滴定法)の特徴

適用例

●錯滴定(キレート滴定)
EDTA滴定法(耐火物中-MgO定量、CaO定量、Al2O3定量)

●酸化還元滴定
ニクロム酸カリウム滴定(鉄鉱石中-全鉄定量方法)
過マンガン酸カリウム滴定(マンガン鉱石中のマンガン定量)

●中和滴定
水酸化ナトリウム滴定(塩酸や硝酸の濃度分析)
塩酸滴定(水酸化ナトリウム(試薬)や水酸化カリウム(試薬)の純度分析)
非水滴定(有機試薬の純度分析)

容量法(滴定法)の対象試料

セラミックス・耐火物・セメント、試薬(有機試薬、無機試薬)、鉱石・スラグ・廃液、金属・合金(鉄鋼、アルミニウム、銅 等)

必要試料量

固体・粉体 5~10g目安

装置仕様(電位差滴定装置)

京都電子製 電位差自動滴定装置 AT-510
・検出範囲電位差 -2000~+2000 mV
・滴定の種類 電位差滴定(中和滴定、酸化還元滴定)、光度滴定
・ビュレット精度 20m,Lビュレット ±0.02mL

電位差滴定装置の外観

電位差自動滴定装置
京都電子製 電位差自動滴定装置 AT-510

電位差滴定の出力イメージ

電位差滴定 中和滴定終点検出出力イメージ
電位差滴定 中和滴定(非水)終点検出出力イメージ
・複合ガラス電極(非水/複合)C-173使用

容量法(滴定法)の事例

事例1:EDTA滴定法によるマグネシア質耐火物中酸化マグネシウム(MgO)定量

分析フロー図

表3.マグネシア質耐火物標準物質(BCS319)の主成分(MgO)定量結果

  BCS319 (単位:%)
MgO認証値 90.6
平均値(N=5) 90.1
標準偏差  0.19

事例2:容量法による各種原材料中の鉄形態別分析

表4.定量方法と定量範囲

項目 定量方法 定量範囲
金属鉄 M.Fe JIS A 5011-2 1%~95%程度*
酸化鉄(II) FeO JIS M 8213 0.1%~60%程度
全鉄 T-Fe JIS M 3212 20%~95%程度*
酸化鉄(III)  Fe2O3 上記3項目の鉄分収支から換算で求めます。

*低濃度域の金属鉄と全鉄については、 ICP-OES法により分析対応いたします。

分析フロー図

分析フロー図

分析結果

表5:金属鉄分析結果(単位 :%)

試料名 管理値 分析値
還元鉄A 54.66 54.66±0.70

表6:酸化鉄(II)分析結果(単位 :%)

試料名 管理値 分析値
ダスト試料B 14.50 14.50±0.45

表7:全鉄分析例(単位 :%)

試料名 管理値 分析値
JSS850-4 マルコナペレット 65.67 65.75 ±0.27

事例3:滴定法による各種試薬の純度、濃度分析

表8:各種試薬の純度、濃度分析結果

試料 分析方法 滴定種類 成績表値
%(w/w)
分析値
%(w/w)
硝酸 JIS K 8541 中和滴定 61 61.1
りん酸 JIS K 9005 中和滴定
(電位差滴定)
85.6 85.7
硝酸鉄(III)九水和物 JIS K 8559 酸化還元 99.9 100.5
JSS701-6
  フェロマンガン(Mn)
JIS G 1311-1 酸化還元
(電位差滴定)
74.4 74.4

※ その他多数実績あり。
目的に応じた分析方法を提案させて頂きますのでお問い合わせください。

公的規格

【重量法(沈殿重量法)】


【重量法(電解重量法)】


【容量法】

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