示差熱天秤-質量分析法 (TG-DTA/MS)

示差熱天秤-質量分析(TG-DTA/MS)とは

TG-DTA/MSは、示差熱天秤と質量分析装置が連結された装置です。試料加熱に伴う重量変化(TG)、示差熱(DTA)の測定と同時に、試料から発生するガス成分を質量分析(MS)が可能です。測定雰囲気(キャリアガス)として、不活性ガス(He)、酸化性ガス(20%O2/He)、還元性ガス(4%H2/He)を選択する事ができ、各種雰囲気での試料の反応性や、熱安定性を評価する事ができます。また、2種の材料を混合した試料を用いる事で、試料の反応性を評価する事ができます。質量分析を併用する事で、TG-DTAでは捉えきれなかった事象を詳細に解析する事ができます。

示差熱天秤-質量分析装置(TG-DTA/MS)の構成

(1)スキマー型ガス導入部
Thermo Mass Photo型 TG-DTA/MS (リガク製)

装置外観

16-1

装置構成図

(2)キャピラリー型ガス導入部
MS(日本電子 Q1500GC) _TG-DTA(NETZSCH TA2500 (複合タイプ)

装置外観

装置構成図

示差熱天秤-質量分析法 (TG-DTA/MS)の特徴

イオン化法として、電子衝撃(ElectronImpact; EI)法、光ソフトイオン化 (PhotoIonization; PI) 法を備えています。PI法では、発生ガスのイオン化を穏やかに行うため、発生ガスの分子構造を壊さずそのまま分子イオンの状態で計測することが可能です。(※PI法でイオン化できる化学種には制限が有ります)

示差熱天秤-質量分析法 (TG-DTA/MS)の適用分野

装置仕様

TG-DTA部 加熱温度 室温~1550°C
昇温速度 ~20°C/min
加熱雰囲気 He、Air、4%H2-He、
20%O2-He等
*その他は別途相談
試料重量 ~1g
*試料により異なる
質量分析部 イオン化モード ・電子衝撃型イオン化(EI)
・光イオン化(PI)
イオン化エネルギー ・EI:70eV(可変)
・PI:10.2eV
測定質量範囲 m/z: 1~410

示差熱天秤-質量分析法 (TG-DTA/MS)の事例

事例1;ポリスチレンの熱分解挙動(EI法とPI法の比較)

EI法では、フラグメンテーションによる多数のピークが検出されました。これに対して、PI法では、フラグメンテーションは抑制され、m/z 104、208の二つの分子イオンピークが顕著に認められました。このことから、ポリスチレンの熱分解生成物には、スチレン単量体(m/z 104)だけでなく、二量体(m/z 208)が存在することが示されました。

事例2;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の熱分解挙動調査
(TG-DTA/MSを用いた酸素存在下での熱分解挙動)


図1;熱重量-示差熱分析(TG-DTA曲線)
*重量減少を確認。酸素存在下では分解開始温度と分解挙動が低温側にシフト。

図2;50%重量減少温度*1におけるガスマススペクトル
酸素雰囲気下で、MMAのベースピークの他にCO2、H2O相当質量イオンを確認。*1;TG分析で確認(図1)

図3;検出ガスのマスクロマトグラム
酸素存在下ではMMAモノマーピークが先行し308°Cで出現し、CO2,H2Oは30°C高い338°C出現。分解反応の詳細な挙動を確認。

表1.PMMAのTG-DTA/MS分析結果

測定雰囲気 He 20%O2/He
分解開始温度 TG-DTA(図1) 325°C 273°C
MS 推定ガス(図2) MMAモノマー MMAモノマー CO2,H2O
分解機構(図3) 熱分解 酸化+熱分解

公的規格

参考技術資料

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