原子吸光分析法(AAS)

AAS;Atomic Absorption Spectrometry

原子吸光分析法(AAS)とは

原子吸光分析法(AAS)とは、ppm~ppbオーダーの金属元素の濃度を測定する手法の一つです。測定対象原子特有の波長の光が被測定物質を通過するとき、どのくらい原子に吸収されたかを測定することで、光の吸収量は原子の数に比例するため、目的の元素の濃度を求めることが出来ます。多元素を同時に測定することは不可能で、予め存在する元素が分かっている試料の定量分析に用いられます。

原子化方法としては、(1)フレーム法、(2)黒鉛炉(GF)法、(3)水素化物発生法、(4)冷蒸気(還元気化・加熱気化)法があります。

1.フレーム原子吸光光度法

フレーム原子吸光光度法の特徴

フレーム原子吸光光度法の原理

溶液化した試料をエアロゾルとしてフレーム中(アセチレンー空気)に導入し、原子に特有な光を照射し、基底状態から励起状態に遷移する時に吸収する光量を測定し定量します。

フレーム原子吸光光度法

フレーム原子吸光光度法の適用分野(用途)

□金属・鉱物

□石油化学

□食品・農業

□バイオメディカル

□環境

測定対象元素:アルカリ・アルカリ土類金属類 (Li, Na,K,Mg等)
:遷移金属類 (Mn,Fe, Ni, Cu, Zn等)
:重金属類 (Cd, Pb等)

装置仕様

型式名称 日立ハイテク製 Z-3300
測光方式 ダブルビーム方式
バックグラウンド補正 偏光ゼーマン補正
フレーム原子吸光光度計
フレーム原子吸光光度計 日立ハイテク製 ZA-3300

必要試料量目安

フレーム原子吸光光度法の事例

事例1;市販の清涼飲料水中に含まれるミネラル成分の定量

市販の清涼飲料水中に含まれるミネラル成分の定量

2.フレームレス(黒鉛炉(GF))原子吸光光度法

フレームレス(黒鉛炉(GF))原子吸光光度法の特徴

フレームレス(黒鉛炉(GF))原子吸光光度法の原理

フレームレス原子吸光分析装置(FL-AAS,GF-AAS)は目的とする元素を含む溶液をグラファイト製のキュベットに入れ、電気的に高温加熱することにより、目的の元素を原子化し測定します。

フレームレス原子吸光光度法

フレームレス(黒鉛炉(GF))原子吸光光度法の適用分野(用途)

装置仕様

型式名称 日立ハイテク製 Z-3700
測光方式 ダブルビーム方式
バックグラウンド補正 偏光ゼーマン補正
フレームレス原子吸光光度計
フレームレス原子吸光光度計 日立ハイテク製 ZA-3700

3.水素化物発生原子吸光光度法

水素化物発生原子吸光光度法の特徴

水素化物発生原子吸光光度法の原理

試料溶液を塩酸酸性下で水素化ホウ素ナトリウムと反応させ、目的金属を還元し金属水素化物を作り、高温の原子化部(石英セル部)に導き測定します。
例)As⇒AsH3 Se⇒SeH2 Sb⇒SbH3

水素化物発生原子吸光光度法

水素化物発生原子吸光光度法の適用分野(用途)

装置仕様

型式名称 水素化物発生装置 Thermo Fisher Scientific製 HYD-100U
水素化物原子化装置 Thermo Fisher Scientific製 HYD-20
原子吸光光度計 Thermo Fisher Scientific製 iCE3500
加熱 電気加熱方式(石英セル)
制御温度 0~1200°C
測定波長 As 193.7nm、 Se 196.0 nm、 Sb 217.6 nm
バックグラウンド補正 D2ランプ補正
水素化物発生原子吸光装置外観
水素化物発生原子吸光装置外観

4.冷蒸気(還元気化・加熱気化)原子吸光光度法

冷蒸気(還元気化・加熱気化)原子吸光光度法の特徴

冷蒸気(還元気化・加熱気化)原子吸光光度法の原理

冷蒸気(還元気化・加熱気化)原子吸光光度法の適用分野(用途)

装置仕様

型式名称 日本インスツルメンツ社製 RA-4500 日本インスツルメンツ社製 MA-2000
測定標識 還元気化原子吸光光度装置(開放送気方式) 加熱気化原子吸光光度装置
測定波長 253.7 nm 253.7 nm
検出器 光電管 光電管

装置写真(還元気化)

装置写真(加熱気化)

冷蒸気(還元気化・加熱気化)原子吸光光度法の事例

石炭の水銀分析

表. NIST1632c 分析結果
  単位 NIST1632c
認証値 mg/kg 0.0938±0.0037
測定値(N=5) mg/kg 0.0965
変動係数(CV) % 2.6

公的規格

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