ミクロ組織観察

ミクロ組織観察とは

鉄鋼をはじめとする金属材料のミクロ組織は、材料の特性(強度、加工など)に影響する重要な要素です。材料開発、加工や熱処理の確認、介在物や材料の品質管理、破損の起点の組織確認等、さまざまな目的で金属材料の基盤情報を得るために行うミクロ組織観察を紹介します。

ミクロ組織観察の適用分野

ミクロ組織観察の手順・方法

細断した試料を樹脂に埋込み、鏡面まで研磨し、エッチング(ミクロ組織現出)します。
このミクロ組織を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)で観察します。観察倍率は、光学顕微鏡では数十から数百倍率、SEMでは数百~数千倍率です。
研磨やエッチングなどの前処理は極めて重要で、豊富な経験で培われた技量が 必要です。
工程を図1に示します。


図1 ミクロ組織観察のフロー

ミクロ組織観察の事例

事例1;鋼の熱処理有り/無しでの衝撃値の違いとミクロ組織

熱処理有り・無しの普通鋼を比較します。

(1)シャルピー試験

熱処理無しは変形を伴って延性破壊するのに対し、熱処理有りは殆ど変形を伴わない脆性破壊でした(図2)。


シャルピー試験片外観(試験後)

図2シャルピー試験破断部のマクロ破面

(2)ミクロ組織

熱処理無しのミクロ組織はフェライト、パーライト、熱処理有りではマルテンサイト組織でした(図3)。


図3 ミクロ組織

(3)ビッカース硬さ

熱処理無し 熱処理有り
140HV 700HV

(1)~(3)の結果から、熱処理無しのフェライト、パーライト組織が、熱処理によって硬くて脆いマルテンサイトに変態し、延性が低下したことが判りました。

このように、熱処理によるミクロ組織の変化と機械的性質の変化は表裏一体の関係にあることが判ります。

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