太陽電池評価
太陽電池の評価とは
環境エネルギー分野にて重要なデバイスとして太陽電池が挙げられます。製品の評価項目としては電池セルの各種材料・構造解析、および発生ガス分析と言った材料起因となる項目や、パネル化した際の製品性能評価があります。各種試験の事例をご紹介します。
太陽電池評価の事例
事例1;結晶シリコン太陽電池の断面SEM観察/EDX分析
SEMでは断面試料の層構造を明瞭に観察することが可能で、EDX分析では特定部位の元素分析が可能です。本分析により、Al焼成層と結晶シリコンとの界面に、Si-Al反応層の形成が認められました。
事例2;シリコン薄膜系太陽電池の電気特性の測定例
半導体材料の太陽電池はpn接合で光電変換を行うため、pn接合のI-V特性(下図)やC-V特性は太陽電池としての品質と密接な関係があります。信頼性試験中に負バイアス電圧での電流値をモニターすることにより品質の劣化度合いを評価することができます。
負バイアス、例えば-20V印加しながら電流値をモニターし、電流が増加すれば素子の劣化がわかります。
事例3;有機薄膜太陽電池のμーXPS(ESCA)による深さ方向分析
μ-XPSでイオン銃(Ar+スパッタ)を用いた深さ方向分析を実施することにより、層構造(存在元素、状態、定量、膜厚比較)を確認することが可能です。
薄膜の層構造
XPSによる深さ方向分析
XPSによるAlの状態分析
太陽電池として使用し続けた際、有機膜との界面でAlの酸化が進行すると特性劣化の要因となります。
μ-XPSを用いると界面でのAlの酸化状態を確認することができます。下図は一定時間使用後の試料を分析した結果で、界面のAlが酸化していることが明確にわかります。
XPSによる定性分析
深さ138nm付近で定性分析を実施すると、CuPcの構成元素であるCu、C、Nが検出されました。μ-XPSではH、He以外の元素の存在を確認することが可能です。
事例4;有機薄膜太陽電池のμーXPSによる深さ方向分析
μ-XPSは状態分析ができることが特徴ですが、有機物の場合、イオン銃照射による損傷が懸念されます。
イオン銃を用いないで深さ方向の状態を調査する手法として、精密な斜め切削機(SAICAS)を用いて表層を切削して状態分析を行う方法があります。
斜め切削法による深さ方向分析
斜め切削法では、膜厚の100倍~1000倍以上に拡大した断面を作成することが可能であり、nm程度の厚さの膜でもμm程度に拡大した分析領域が得られ、低損傷での深さ方向分析が可能です。
斜め切削法により、Ar+スパッタによるダメージを受けない本来の結合状態が得られます。
分析用照射X線径(10μmφ)で厚さ10nm程度の層(本調査CuPc層:44nm)の正確な状態分析が可能です。製作直後と一定時間使用後の試料を比較分析することで、これらの元素の状態変化と特性劣化の関係を調査することができます。
ご協力:独立行政法人 産業技術総合研究所(関西センター)
ユビキタスエネルギー研究部門 デバイス機能化技術グループ