リチウムイオン電池など電池の安全性評価
単電池や電池パックなど電池製品について、発生ガス分析、耐食性試験、加圧・減圧試験によって、安全性や耐久性の試験を実施します。
1.電池からの発生ガス分析
電解液を含むリチウムイオン電池は、内部短絡や過充電などによって異常発熱を生じた際に、水素、有機ガスなどの可燃性ガスのほかに、一酸化炭素(CO)、硫化水素など、人体に有害なガスを放出することがあります。当社ではガス捕集技術と各種の分析装置を保有しており、ご要望に応じたガス捕集法の提案と各種の発生ガスの分析にお応えします。
発生ガスの捕集分析の他に、リアルタイムの発生ガス分析にも対応しております。電池の異常発熱現象を再現し、それに伴う水素、CO、硫化水素などの発生を経時的に追跡(測定)する事によって、電池の安全設計に必要なガスの発生挙動を把握することができます。
(1)ガス捕集による分析
異常発熱した電池において有機ガスや微粒子が噴き出します(以下の写真)。これらのガスをガスバックや液体吸収、フィルターに捕集して、発生ガスに含まれる成分の分析やその濃度を測定します。
分析フロー
捕集ガスの分析項目と報告下限値
分析項目 | 報告下限値*1(%) | 分析方法 | |
---|---|---|---|
無機ガス | 水素(H2) | 0.1 | GC/TCD法 |
0.0001 | GC/PDHID法 | ||
酸素(O2) | 0.1 | GC/TCD法 | |
窒素(N2) | 0.1 | GC/TCD法 | |
一酸化炭素(CO) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.001 | GC/FID(メタナイザー)法 | ||
二酸化炭素(CO2) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.001 | GC/FID(メタナイザー)法 | ||
低級炭化水素類 | メタン(CH4) | 0.1 | GC/TCD法 |
0.0001 | GC/FID法 | ||
エタン(C2H6) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.0001 | GC/FID法 | ||
エチレン(C2H4) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.0001 | GC/FID法 | ||
アセチレン(C2H2) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.0001 | GC/FID法 | ||
プロパン(C3H8) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.0001 | GC/FID法 | ||
プロピレン(C3H6) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.0001 | GC/FID法 | ||
ブタン(C4H10) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.0001 | GC/FID法 | ||
ペンタン(C5H12) | 0.1 | GC/TCD法 | |
0.0001 | GC/FID法 | ||
分析項目 | 報告下限値*1(ppm) | 分析方法 | |
硫黄化合物 | 硫化水素(H2S) | 0.01 | GC/FPD法 |
メチルメルカプタン | |||
硫化カルボニル(COS) | |||
二硫化炭素(CS2) | |||
硫化メチル | |||
二硫化メチル | |||
無機酸 | フッ化水素 | 1 | 液体吸収- |
塩化水素 | 1 | イオンクロマトグラフ法 | |
臭化水素 | 1 | ||
硫酸 | 1 | ||
炭酸エステル類 | 炭酸ジメチル(DMC) | 1 | TD-GC/MS法 |
炭酸メチルエチル(EMC) | |||
炭酸ジエチル(DEC) | |||
炭酸プロピレン(PC) | |||
揮発性有機化合物定性分析*2 | 各0.5ppm (トルエン換算値) | TD-GC/MS法 |
- *1: 報告下限値は、試料量又は共存ガスにより変動します。(1ppm=0.0001%)
- *2: TD-GC/MS法で得られるピークについてライブラリ検索による化合物推定を行い、トルエン換算値を報告。
- ※上記にない成分項目については別途お問合せ下さい。
(2)リアルタイムガス分析(VUV-SPI-TOFMS)
一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOx)、二酸化硫黄(SO2)および、 VUV-SPI-TOFMS装置で検出可能なガス(次表を参照)について、電池の異常発熱前から安全弁解放時、発火燃焼時の発生ガスの濃度変化をリアルタイムで測定します。
リアルタイム測定例(VUV-SPI-TOFMS装置)
リアルタイムでのガス分析項目と報告下限値
分析項目 | 報告下限値*1 | 分析方法 | |
---|---|---|---|
リアルタイムガス分析 | 窒素酸化物(NOx) | 1ppm | NOx計 |
硫黄酸化物(SO2) | 2ppm | 連続測定器 | |
一酸化炭素(CO) | 1ppm | ||
二酸化炭素(CO2) | 0.01 | ||
下表例参照 | 0.1ppm | VUV-SPI-TOFMS*3 |
- *3: 真空紫外1 光子イオン化-飛行時間型質量分析装置
- ※上記にない成分項目については別途お問合せ下さい。
VUV-SPI-TOFMS(リアルタイムガス分析装置)で実績のある主な成分
分子名(分子量) | ||
---|---|---|
アンモニア(17.03) | シクロヘキサン(84.16) | インデン(116.16) |
一酸化窒素(30.01) | ヘキサン(86.18) | インダン(118.18) |
硫化水素(34.08) | トルエン(92.14) | トリメチルベンゼン類(120.19) |
1,3-ブタジエン(54.09) | フェノール(94.11) | ナフタレン(128.18) |
ブテン(56.10) | 1,1-ジクロロエチレン類(96.94) | トリクロロエチレン(131.39) |
ブタン(58.12) | ジクロロエタン類(98.96) | トリクロロエタン類(133.40) |
塩化ビニル(62.50) | 2-イソプロピルアミノエタノール(103.16) | メチルナフタレン(142.20) |
塩化エチル(64.51) | スチレン(104.15) | ジクロロベンゼン類(147.00) |
ペンタン(72.15) | エチルベンゼン(106.17) | 1,1,2,2-テトラクロロエタン(167.85) |
N-ニトロソジメチルアミン(74.08) | キシレン類(106.17) | ニトロナフタレン類(173.17) |
3-クロロ-1-プロペン(76.53) | クレゾール類(108.14) | ヘキサクロロ-1,3-ブタジエン(260.76) |
ベンゼン(78.12) | ジクロロプロペン類(110.97) | |
チオフェン(84.14) | クロロベンゼン(112.58) |
2.耐食性試験(塩水噴霧サイクル試験)
海岸沿いや船舶上など海洋環境に設置される蓄電池においては、塩水噴霧サイクル試験などによる耐食性能が求められます。当社では、925×585×297mmサイズ迄の蓄電池に対応した腐食試験を行っています。
またガス腐食試験や耐候性試験も行っています。
装置仕様
- 槽内サイズ 2300mm×1500mm×1000mm(2023.9~)
- 塩水噴霧、湿潤、乾燥、冷凍を組み合わせたサイクルパターン
- 塩水噴霧 35°C
- 温度 室温~80°C
- 湿度 25%~100%
- 低温 -20°C~20°C
- VDA233-102に対応いたします(2023.9~)
腐食試験時の電池の熱暴走対策として、1)消火用のCO2ガス放出、2)冷却用の放水+容器(有効内寸925×585×297mm)の安全装置を備えています。
あらかじめ、サンプルに熱電対を取り付けて温度をモニタリングします。容器内での試験でサンプル温度の急上昇を感知すると放水する機能を備えています。
サンプル仕様
- 充電されてた電池および電池モジュールの場合は、925×585×297mmサイズ迄
- 電池の部品やケースのみ場合は、2300mm×1500mm×1000mm迄可能
- 耐荷重 最大300kg
公的規格
JIS C60082-2-52 環境試験方法
3.加圧、減圧試験
電池に使用される外装缶は、内部および外部より圧力が加わります。当社では、外装缶や安全弁の耐圧強度など、圧力に関する性能評価設備を保有しております。また電池が使用される環境には、大気圧を超える高圧環境のほか、減圧環境で使用されることもあり、これら摸擬した環境下での電池の動作確認が可能です。
試験設備
試験例
試験体 | 試験内容 | 備 考 | |
---|---|---|---|
高圧タンク ・自動車 ・航空宇宙 |
金属製容器 複合材容器 |
破裂試験(バースト試験)*1 水圧サイクル試験*2 落下試験 縮試験/落錘試験 繰返し衝撃試験 気密試験/透過試験 急加減圧試験*3 |
*1;ガスバーストは原則範囲外 *2; 雰囲気温度;常温~約100°C *3; 急加減圧雰囲気温度;-70°C |
バルブ類 | 高圧バルブ 減圧弁 リリーフ弁 逆止弁 過流防止弁 |
高圧ガス作動耐久 恒温加圧保持 加圧時の温度衝撃 圧力及び流速変化時の作動特性調査 |
上流圧力;最高90MPa 雰囲気温度;-70~+100°C |
電池 | アセンブリ ボックス |
圧壊、落下、気密性 |