電極材料の化学分析【リチウムイオン電池】
RSM-2305
1.概 要
リチウムイオン電池の電極材は、充電容量や耐久性などの特性に寄与する物質ですが、その組成や不純物量などを幅広く、且つ正確に調査することは非常に重要です。化学分析では、電極の原料や市販電池などから回収した部材を用いて、目的に応じた様々な評価を正確に行うことが可能です。
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2.正極材料の測定事例
事例1; ICP法による正極活物質の組成分析
正極活物質の評価では、電池性能に直接寄与する主成分の組成と量を把握することが重要です。
元素情報を調査するために定性分析を行った後、組成評価のため定量分析を行った事例を紹介します。
表1 定性分析結果

◆元素の周期律表とICP法で測定可能な元素

事例2;電位差滴定法による炭酸リチウム、水酸化リチウムの分析
正極活物質を評価するためには、不要な化合物として存在する。
炭酸リチウムや水酸化リチウムを定量することも非常に重要です。
滴定法により、不純物リチウム塩を測定した事例を紹介します。
表3 リチウム塩測定結果 【単位:mass%】
試 料 | Li2CO3 | LiOH |
---|---|---|
活物質A | 0.18 | 0.16 |
活物質B | 0.51 | 0.85 |
活物質C | 0.42 | 0.79 |
前処理環境 | ガス置換型簡易グローブボックス (露点:-30~-40°C) |

3.負極材料の測定事例
リチウムイオン電池には負極を中心に炭素系材料が多く使われています。炭素系材料は汚染なく分解することが困難な材料とされていますが、当社では原子力分野や半導体分野で使用される高純度黒鉛の分析で培った技術などを活用し、お客様の目的に応じた様々な評価が可能です。
表4 炭素系材料の目的別の前処理方法
目 的 | 前処理方法 | |
---|---|---|
(充放電後の電池など) 筐体や正極由来の付着物を評価 |
抽 出 | 各種酸抽出法 |
(材料の個別評価など) 含有量を評価 ※付着物も含む |
溶 解・分 解 | 酸分解法 |
高温灰化法 ※灰化時に揮散する元素あり |
||
低温灰化法 |

事例3;低温灰化法による負極活物質及び導電助剤(未使用品)の不純物分析
電池用途の炭素系材料では、金属不純物による性能低下を防止するための高純度化が進んでいます。
材料の高純度化に対応した高感度法による各種炭素系材料の測定事例を紹介します。
表5 低温灰化-ICP質量分析法による炭素系素材中の不純物測定結果 【単位:ppm(μg/g)】
試料情報 | Li | Na | Al | Ni | Mn | Co | Fe | Cr | ||
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導電助剤 | AB* | 通常品 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 1.9 | <0.1 |
AB* | 高純度品 | <0.1 | <0.1 | 0.2 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | 0.4 | <0.1 | |
活物質 | 天然黒鉛 | 通常品 | <0.1 | 4.9 | 3.5 | 0.5 | 0.5 | <0.1 | 14.5 | 1.9 |
人造黒鉛 | 高純度品 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | <0.1 | |
備 考 | * AB:アセチレンブラック (必要に応じて更に感度を上げることも可能です) |