構造・伝熱解析
構造・伝熱解析とは
有限要素法を用いた構造体の応力、熱伝導解析の事例を紹介します。
●材料の非線形特性(塑性、クリープ等)、接触、摩擦、大変形問題を含む構造物の変形や応力・ひずみの解析、振動解析、さらに材料試験結果を組み合わせることで、疲労、クリープ疲労、延性損傷などの評価が可能です。
●対流熱伝達、ふく射伝熱、接触熱伝達などの多様な熱伝達条件を考慮した構造物の定常・非定常熱伝導解析が可能です。さらに、構造解析との連成による熱変形・熱応力問題の解析や電気連成(ジュール熱)解析も可能です。
構造・伝熱解析事例の特徴
構造体の変形、伝熱を伴う様々な現象を、専門の技術者が適切にモデル化し、汎用解析ソルバーを用いた数値解析によりシミュレートします。製品設計や試作の効率化、実証困難な現象の解明などをサポートすることが可能です。
構造・伝熱解析事例の適用分野
自動車・家電・産業機械分野:製品、部品、製造装置等の構造評価、性能評価
製鉄等の製造プロセス分野:加工および熱処理プロセス、生産設備構造の評価
構造・伝熱解析ツール
- 主に使用する解析ソルバー: MSC Marc,MSC Nastran , LS-DYNA
構造・伝熱解析事例の事例
事例1;引張試験片の弾塑性解析
連続体損傷力学を用いて材料の延性損傷を考慮し、丸棒引張試験片の弾塑性解析を行った事例です。図に引張負荷による応力変化、延性損傷率(D/Dcr)の変化状況を示します。試験片中央部でD/Dcr が大きくなると共に、くびれが大きくなる現象を再現しています。
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事例2;円管溶接部のクリープ解析
円管の全周溶接継手部に対して、一定温度、一定内圧負荷でのクリープ解析を行った事例です。母材、粗粒 HAZ、細粒 HAZ、溶接金属のクリープ特性の違いを考慮し、各領域で異なるクリープ挙動を再現しています。(溶接 HAZ部のクリープ特性は、熱処理による模擬 HAZ 材を使って採取しています。)
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事例3;突合わせ溶接時の温度変化
二枚の鋼板を突合わせて溶接する時の温度変化の解析事例です。溶接ビードの先端周囲に急激な温度上昇が起こり、溶接ビードの熱が散逸していく様子が観察できます。この解析結果に基づき、任意部分の温度履歴、温度分布が評価できます。
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事例4;繰返し曲げによる針金の塑性発熱
金属製の針金を繰返し曲げた時に生じる発熱現象を熱-構造連成解析によりシミュレートした事例です。曲げを負荷する度に、折曲げ部の変形進行とともに温度が上昇する状況が再現できます。
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事例5;バイメタルの熱応力解析
高熱膨張材の上に低熱膨脹材を接合したバイメタルを想定し、温度変化による熱変形と熱応力を解析した事例です。熱膨張特性差に起因する熱応力により、バイメタルの温度上昇に伴う上方変形、温度下降に伴う下方変形が再現できています。
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事例6;平板の振動応答解析
- 鋼製平板(150mm×60mm×1.0tmm)について固有値(モーダル)解析、周波数応答解析、過渡応答解析を行った事例です。
- 固有値解析は固有振動数と固有モード(変形形状)を計算する解析です。対象物(構造物、部品等)の動的特性を評価でき、回転機器、モーター等からの外力の振動数と対象物の固有振動数を比較することにより、共振現象の有無について調べることが出来ます。
![](/images/168-6.png)
- 周波数応答解析は一定の周波数領域で設定した加振力に対する対象物の挙動を計算する解析です。加振力の設定は周波数ごとに荷重を定義します。各周波数ごとに振動の大きさが計算され、対象物の振動伝達特性(伝達関数)が把握できます。支配方程式は以下です。
[m]{x ̈(t)}+[b]{x ̇(t)}+[k]{x(t)}={P(ω)} eiωt
[m]:質量行列、[b]:減衰行列、[k]:剛性行列、P:加振力、ω:角振動数
- 事例では、1番目と2番目のピーク周波数は1次、2次の固有モードに相当します。
![](/images/168-7.png)
- 過渡(時刻歴)応答解析は時間変化する加振力(または強制変位)に対する対象物の挙動を計算する解析です。加振力は地震、風荷重、衝撃荷重等が想定されます。支配方程式は以下です。
[m]{x ̈(t)}+[b]{x ̇(t)}+[k]{x(t)}={P(t)}
- 事例では、初期に加振周波数での変動が残り、時間経過とともに定常振動が生じ次第に減衰する時刻歴波形を示しています。
![](/images/168-8.png)