カールフィッシャー電量滴定法による水分測定
STM-2402
1.カールフィッシャー電量滴定法の特長
試料の水分量を測定する方法の一つであるカールフィッシャー電量滴定法は、次の様な特長があります。
(1)定量範囲、適用範囲が広い
定量範囲;0.01~100%(液体試料は0.001~100%w/w)
適用範囲;液体・粉体・固体(付着水・化合水・結晶水)
(2)微量水分測定法として有利
μg単位の水の測定が可能
(3)付着水及び結晶水(化合水)の分離定量が可能
水分気化装置との組み合わせにより、付着水および結晶水(化合水)の分離定量が可能
(4)各種公定試験法に準拠
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定法通則
JIS K 0068 化学製品の水分測定方法
JIS K 2275 原油及び石油製品-水分試験方法
JIS M 8211 鉄鉱石中の化合水定量方法 等
2.カールフィッシャー電量滴定法の原理
ヨウ化物イオンを含む電解液に試料を加えて電解酸化します。発生させたヨウ素が、水分と選択的に反応する際に消費したヨウ素量を電気量から求め、試料の水分量を算出します。
測定法には、電量滴定法と容量滴定法の二種類があり、電量滴定法は特に微量水分の測定に有効です。また、試料導入方法には直接滴定法と水分気化法があります。

3.カールフィッシャー電量滴定法による測定事例
事例1;直接滴定法を用いた溶液試料中の水分測定
シリンジに試料を採取し、直接電解セルへ打ち込みカールフィッシャー滴定をします。

表1. 液体試料中の水分測定
試料名 | N数 | 分析値(%w/w) | RSD(%) |
---|---|---|---|
油圧作動油 | 5 | 0.002 | 4.3 |
アセトン | 2 | 0.081 | 0.2 |
クロロホルム | 5 | 0.004 | 1.1 |
酢酸エチル | 2 | 0.018 | 0.5 |
≪測定実施例≫
原油・石油製品、プロピレングリコール、n-ヘキサン、グリース、不凍液、アルコール類、ケトン類 等
事例2;水分気化装置を利用した水分測定(付着水、化合水、結晶水)
水分気化法は(電解液に不溶な)固体物質や妨害物質を含むような試料に対する測定方法です。
乾燥した窒素ガス気流中で試料を加熱して水分を気化させ、カールフィッシャー滴定をします。付着水を取り除くことで、化合水や結晶水も測定出来ます。

表2.鉄鉱石中の化合水測定(950°C)
試料名 | 認証値(%w/w) | 分析値(%w/w) | |
---|---|---|---|
JSS851-4 | 焼結鉱 | 0.09 | 0.08 |
JSS803-4 | ハマスレー赤鉄鉱 | 1.78 | 1.71 |
≪測定実施例≫
鉱石、岩石等の天然物、樹脂製品、電池材料(正極材)等
≪その他測定例≫
PET樹脂(230°C)、エポキシ樹脂(120°C)、アルミぺースト(110°C)、ベントナイト(800°C)
※吸湿性試料の場合、グローブボックス内での試料採取が可能です。ご相談下さい。