自由共振法を用いたNi基合金(ハステロイX)の高温ヤング率・剛性率測定
STM-2102
1.概要
ヤング率・剛性率は、機械や構造物を構成する部材に発生する応力や熱による変形を、シミュレーション等を用いて評価する場合に必要不可欠な物性値の一つであるため、図1に示す通り、様々な方法・規格で測定されています。
今回、雰囲気制御可能な自由共振法による高温ヤング率・剛性率測定装置を弊社にて開発しましたので、同装置を用い、Ar雰囲気、室温から1100°Cまでの条件下で、Ni基合金(ハステロイX)のヤング率・剛性率を測定した例をご紹介いたします。本法は、JIS R 1602、JIS Z 2280、ASTM E 1875、ISO 23486等の規格に準拠しています。

ヤング率、剛性率、ポアソン比、内部摩擦測定に関する技術紹介はこちらから
2.測定原理および装置仕様
■測定原理
自由共振法は図2の様に試料を2本の糸で支持します。発振器から糸を通して曲げの振動(ヤング率用)、捩り振動(剛性率用)を試料に加えます。加える振動数を徐々に変え、試料が共振する周波数を測定し、試料寸法や質量等から計算によりヤング率、剛性率を求めます。


3.試料形状
標準試料形状・寸法を図4-1、4-2にそれぞれ示します。


※上記と異なる形状での測定をご希望の場合はご相談下さい。
4.測定事例紹介;Ni基合金(ハステロイX)のヤング率・剛性率の測定
自由共振法高温ヤング率・剛性率測定装置を用い、Ni基合金(ハステロイX)のヤング率・剛性率の温度依存性を測定しました。その結果を図5に示します。
■測定条件
試料材質 | Ni基合金(ハステロイX) |
---|---|
試料形状 | 100mm×10mm×2mm (※ヤング率のみ測定) 100mm×20mm×2mm |
測定項目 | ヤング率、剛性率 |
測定方法 | 自由共振法 |
測定温度 | 室温、100°C~1100°C(100°C毎) |
雰囲気 | Arフロー |
備考 | 各温度で5回測定し、最大値と最小値を除いた3点をプロット |

5.まとめ
Ni基合金(ハステロイX)のヤング率・剛性率の温度依存性を測定した結果、下記の4点が分かりました。
1.ヤング率・剛性率とも負の温度依存性を示しました。
2.10mm幅と20mm幅の2形状で測定を行いましたが、形状による差は観測されませんでした。
3.各温度における繰り返し再現性も良く、1GPa以内で一致していました。
4.ヤング率について文献値と測定結果を比較した結果、±2GPa程度で一致していました。
以上の結果から、ヤング率・剛性率の温度依存性を測定する場合、高温域で雰囲気制御が可能な本装置は非常に有用です。
金属以外にもガラスやセラミックスなど様々な材質の評価が可能ですので、是非お問合せ下さい。
参考資料
1)2015年度日本機械学会年次大会,J0430105,高橋智 他.
2)日刊工業新聞社発行,藤吉敏生,マテリアル・データベース-金属材料-,1989.