SAICASによるバインダーマイグレーションの機械強度的評価(リチウムイオン電池正極材の評価)

RSM-2401

1.概要

電極活物質中の各成分はその性状に応じて凝集、分散し、表層へマイグレーションすることが知られています。これらの成分が厚さ方向に不均一に分布すると電池の耐久性や放電特性などに影響を与えます。
そこで、大気中水分非暴露の低露点環境下(-60°C以下)で、表面・界面切削解析装置(SAICAS)を用い、
・極低角度の切削加工で露出させ、オージェ電子分光分析(FE-AES)を行い各深さのバインダー;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のマイグレーション評価
・正極材NMC532※1を対象に、SAICASによる活物質の深さ別強度測定から機械強度的評価
を行い、マイグレーションと電池耐久性の関連性を評価した事例をご紹介します。 ※1;組成比 Ni:Mn:Co=5:3:2

表面・界面物性解析装置(SAICAS)に関する技術紹介はこちらから

2.オージェ分光法を用いたバインダ成分(F)のマイグレーション評価結果

ダイプラ・ウィンテス製EN-WA型

オージェ電子分光法(FE-AES)によるバインダー由来フッ素分析

FE-AESにより、Niに対するバインダー由来フッ素の強度比を各深さで測定した結果を示します。※Niに対するフッ素強度比

FE-AES 最表面 深さ約22µm 深さ約44µm 深さ約66µm(界面)
F/Ni比 ほとんどがF 2.6 1.6 Fわずか

バインダー成分の表層へのマイグレーションが認められました。

3.正極材NMC532の深さ別切削強度測定結果

厚さ66µmの活物質を22μmずつ3回に分けて平行に切削し、切削刃にかかる水平力を計測しました。安定な切削領域から切削強度を算出し、各層の強度を比較しました。

切削強度は深くなるにつれて減少し、左図のように界面近傍では活物質間の相互作用が弱まっていることから、バインダーのマイグレーションが影響していると想定されました。

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