電子スピン共鳴装置(ESR)によるLiB負極内金属Liの定量分析
RSM-2302
1.概要
電子スピン共鳴装置(ESR)は磁場中に置かれた不対電子(ラジカル)がマイクロ波を吸収して励起する原理を利用し、ラジカルの種類や量を測定することができる手法です。他方、リチウムイオン電池(LiB)では充放電の繰り返しにより金属Liを生成し、性能が劣化する問題があります。
金属Liは磁場中でラジカルと同様の振る舞いをすることから、ESRを用いた定量分析が可能です。

電子スピン共鳴法(ESR)に関する技術紹介はこちらから
2.事例;サイクル試験により劣化させた市販LiB負極の分析

表1 金属Liの定量計算結果
試料名 | 金属Li量 | |
---|---|---|
単位:ng | 単位:ng/mm2 | |
白色部 | 30.08※ | 1.97※ |
灰色部 | 5.35 | 0.28 |
緑色部 | 1.09 | 0.08 |
結果
1)負極内の変色(白色)が濃くなるにつれて、金属Li量は増加しました。
2)白色部はピーク高さが正負非対称※となり、金属Li層が分厚くなっていることが推察されます。
※正負非対称のピークは、定量値が真値より低値に見積られる場合があります。