表面処理した軸受け鋼のナノスクラッチ試験~高機能ナノインデンター(ナノインデンテーションシステム)の適用
NGM-2203
1.概要
一般的にスクラッチ試験は、バルク材の耐摩耗特性の評価に用いられます。近年、表面改質技術の進歩によりPVD処理等によるDLCや窒化物の硬質皮膜が実用化され、基材の影響を受けずに薄膜の耐摩耗特性を評価することが必要とされます。今回は高機能ナノインデンター(ナノインデンテーション装置)を用いてミクロンオーダーの硬質皮膜についてスクラッチ試験を実施し、基材の耐摩耗特性を比較評価した事例を紹介いたします。
ナノインデンター(ナノインデンテーションシステム)に関する技術紹介はこちらから
2.事例;PVD処理された窒化処理軸受け鋼の耐摩耗特性等の評価
2.1 試料
表面にPVD処理(TiAlN)された窒化処理軸受け鋼(SKD鋼)
*断面試料を作製して測定

2.2 測定方法
装置 | Bruker社製TI980 |
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押込み荷重 | 0~10000μNを15sec間で一次関数的に増加 |
スクラッチ距離 | 10μm (上図において各層の矢印方向にスクラッチ) |
2.3 結果および所見


スクラッチ試験で押し込まれた深さをナノスケールで測定することで、各層の耐摩耗特性の比較評価が行えます。図1を見ると、押込み深さはPVD層<窒化層<SKD鋼の順に明らかに小さくなっており、PVD層の耐摩耗性が優れることがわかります。
さらに、本装置では水平力の測定も可能であり、図2に示すように動摩擦係数を求めることで、材料の摺動性も評価できます。窒化層の摩擦係数の変化が大きい要因として、窒化層に存在している合金窒化物の影響が想定されます。
このように、本装置により薄膜、複合素材、微小素材における耐摩耗特性等の評価が可能となります。