油中の水分測定(カールフィッシャー容量滴定法)
KSE-1603
1.概要
絶縁油や潤滑油などの油は、水分の混入によって性能が劣化します。特に絶縁油は、数十ppm程度の水分によって油本来の絶縁性が低下し、変圧器など電気機器に重大な障害をもたらす可能性があるため、定期的な水分測定が必要です。
油中の水分は、専用の水分気化装置を装着したカールフィッシャー水分計で測定します。カールフィッシャー法は、化学反応によって水分を定量する方法で、高感度で信頼性の高い分析ができることが特徴です。絶縁油では1ppmの水分を検出することができます。絶縁油だけでなく、様々な溶剤中の水分定量にも対応できます。

測定法規格
JIS K2275 原油および石油製品 水分測定方法
JIS C2101 電気絶縁油試験方法
JIS K2275 原油および石油製品 水分測定方法
JIS C2101 電気絶縁油試験方法
カールフィッシャー水分測定の原理

カールフィッシャー反応では水1分子に対し、ヨウ素1分子が消費されるので、ヨウ素を含むカールフィッシャー試薬の滴定量によって正確に水が定量できます。
カールフィッシャー法の利点
- 短時間で感度がよく正確に測定(定量下限値1ppm, 相対偏差1%以内:絶縁油分析時)
- 揮発性の溶剤等でも測定が可能
カールフィッシャー法の欠点
- 測定の原理上、酸化性物質、ヨウ素と反応する物質が含まれている試料は測定できない
- ケトン類は試薬中のメタノール(CH3OH )と反応してH2Oを生じるため誤差を生じる
R2‐C=O + 2CH3OH ⇒ R2‐C‐(OCH3)2 + H2O
ただし、メタノールを含まないカールフィッシャー試薬の使用で回避可能
絶縁油中の水分量目安
水分量 | 判断 |
---|---|
30ppm未満 | 正常 |
30ppmから50ppm | 要注意 |
50ppm以上 | 異常 |