コンクリート中の塩化物量の測定

KK-0045

1.概要

コンクリート中の鉄筋は、セメント硬化体のアルカリ性によって不動態皮膜が形成され、錆びにくい状態にありますが,ハロゲン(通常では塩素)イオンが存在すると不動態皮膜が破壊され、鉄筋が錆びやすくなります。
塩素イオンは、海砂の使用、飛来塩分、凍結防止剤、海水等の塩分からコンクリート中に侵入します。
塩分(塩化ナトリウム・カリウム)は解離するとNaイオンやKイオンが生じ、これらがアルカリ反応性のある骨材と反応してアルカリ骨材反応ゲルが生成します。ゲルは水分を吸って膨張しますので、コンクリートが膨張し破壊をひきおこします(アルカリ骨材反応による膨張破壊)。
コンクリート中に含まれる塩化物量は、コンクリートの劣化程度や劣化原因を推定する上で有益な指標となるため、実構造物から採取したサンプルを用いて塩化物量の測定を行います。

2.全塩化物と可溶性塩化物

1.コンクリート中の全塩化物量は、酸で溶解することにより抽出できます。
2.可溶性塩化物は、細孔溶液(コンクリート内部の微細な空隙中に存在する水溶液)中に溶解し、鋼材の腐食に直接関与する塩化物量です。50°Cの温水で抽出したものを分析して測定します

3.試料の採取と調整

塩化物量測定用の試料は、コアまたはドリル粉から採取します。
コンクリート表面から深さ方向の塩化物量分布、特に鉄筋位置における塩化物量が重要となるため、ドリル粉を利用する場合は、表面からの深さを区切って採取します。コアを利用する場合は、図1のようにカッターを用いてスライスします。各サンプルを粗粉砕(ジョークラッシャー等)し、更に149μm以下の粉末(振動ミル等)にしたものを分析用の試料として用います。

図1 コンクリートコアのスライス
図1 コンクリートコアのスライス

4.分析方法 (全塩化物量)

試料を硫酸で(煮沸)溶解した後、化学的に塩化物イオン量を測定します。測定方法は<電位差滴定法、吸光光度法、イオンクロマトグラフィ法>があります。
これらの分析手法では、単位重量当たりの濃度が得られるので、必要に応じて、かさ比重から求められたコンクリートの密度を用いて1m3あたりの塩化物量に換算します。
なお弊社では、 最新の手法である“(可搬型)蛍光X線分析装置”を有しており、現場に装置を設置し、採取した試料を直ちに、迅速に塩分測定できます。

5.分析例

図2はコンクリート表面からの塩化物濃度分布の測定例です。No.1は山中の橋脚から採取したコアです。塩化物量は、生コンの規制値0.3kg/m3を上回り、内部まで濃度は一定ですので海砂が使用されたと考えられます。No.2は沿岸部の橋脚から採取したコアです。表面は風雨による洗い流しや中性化によって濃度が低くなっていますが、20~40mmの深さでは著しく濃縮されています。

図2 表面からの塩化物濃度分布
図2 表面からの塩化物濃度分布

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