温度傾斜法を用いた熱伝導率および界面熱抵抗の測定事例
AMM-1902
1.概要
熱伝導率測定方法の一つに温度傾斜法があります。本測定方法は定常法のため、単層試料を対象にした熱伝導率測定以外に、積層材や多孔質材、複合材の見掛けの熱伝導率を測定する事ができ、また本測定方法を応用し、試料と試料の間の界面熱抵抗の測定が可能です。
当社ではJIS H 7903(ポーラス金属の熱伝導率試験方法)を参照して温度傾斜法熱伝導率測定装置を開発しました。同装置を用い、1)単層試料(アルミナ)の熱伝導率測定 2)表面粗さを変えたAl合金間の界面熱抵抗の測定事例をご紹介します。
2.温度傾斜法を用いた熱伝導率測定の原理
<フーリエの法則>
物体内に温度差があり、それが定常状態にあるとき、熱伝導率λ(単位:W/(m・K))は、物体を通過する熱流束Q(単位:W/m2)と試料厚みx(単位:m)、試料上下間の温度差θ(単位:K)の関数で表されます。


表1 温度傾斜法測定装置の主な仕様
項目 | 仕様 |
---|---|
ギア許容荷重 | 296kgf |
ロードセル | 204kgf |
加圧方式 | 圧力調整ねじによるギア増圧方式 |
測定温度範囲 | 室温~150°C |
雰囲気 | 大気中 |
圧力 | 200kgf |
1MPa(Φ50mmの試料の場合) |
※1MPa以上の荷重は引張試験機を使用する事で対応可能。
3.測定事例
事例1:アルミナ(標準試料)の熱伝導率測定
測定内容
当社が開発した温度傾斜法熱伝導率測定装置を用いて、単層アルミナ板材の熱伝導率を測定しました。
測定条件
測定試料 | アルミナ(標準試料) |
---|---|
試料形状 | 約Φ50×20mm(図2参照) |
雰囲気 | 大気中 |
測定温度 | 室温 |
加圧条件 | 0.1MPa |
備考 | 熱伝導グリースを試料と構成棒の間に塗布。 |

測定結果
表2に示すように、文献値と1.4%の差で測定出来ている事が確認されました。
表2 熱伝導率測定結果 ※“熱物性ハンドブック”,p.250,(株)養賢堂,1990.
試料 | 熱伝導率, W/(m・K) | 差,% | |
---|---|---|---|
測定値 | 文献値* | ||
アルミナ | 28.6 | 29.0 | 1.4 |
事例2: Al合金間の界面熱抵抗測定
測定内容
界面熱抵抗(R)は
・接触している面の表面仕上げ(粗さ)
・各面の材料(熱伝導率・硬度)
・面を押し付ける圧力
・接触している2つの面の間にある物質
などに依存することが知られています。
そこで、
試料表面粗さと面圧を変えてAl合金間の界面熱抵抗を測定しました。

測定条件
測定試料 | Al合金(A5052) |
---|---|
試料形状 | 約Φ50×30mm、約Φ50×45mm |
表面粗さ | ▽▽▽(Rz:6.3、Ra:1.6)、▽▽(Rz:25、Ra:6.3) |
雰囲気 | 大気中 |
測定温度 | 室温 |
加圧条件 | 0.07MPa~1MPa |

測定結果
・表面粗さの増加とともに界面熱抵抗も増大。
・面圧が高いほど界面熱抵抗は減少。
することが確認されました。
以上の結果から、本開発装置は界面熱抵抗の測定にも有用である事が確認されました。

図4 界面熱抵抗測定結果
(上:▽▽▽、下:▽▽▽、1MPa)

図5 界面熱抵抗測定結果