気体置換法による密度測定の解説と測定例
STM-2501
1.概 要
密度とは、試料の単位体積に含まれる質量(単位例:kg/m3)をいいます。固体や粒子の密度は、「真密度」「見掛け密度」「かさ密度」など、定義の異なる複数の密度が存在します。気体置換法で得られる密度は、外部とつながっていない粒子内部の空間(閉細孔)が存在しない試料では「真密度」、閉細孔が存在する試料では「見かけ密度」となります。密度測定手法や試料の大きさ、形状、用途、業界、分野等によってさまざまな密度の定義がある中で、気体置換法(ガスピクノメーター)を用いた粒子密度測定は、一般的な液浸法に比べ、液体接触を嫌う材料や内部細孔を有する材料など、より精度良く、試料の状態を変化させることなく密度を求めることが可能です。
2.気体置換法の原理
一定体積(VCELL)の試料室中に体積(VSAMP)の試料を装填し、定圧力P1(ゲージ圧)にした後、バルブを開け、別の一定圧力(VEXP)の膨張室と試験室を繋ぐことで系の中の気体は膨張し、圧力はP2になります。
圧力と体積と温度の関係はボイル・シャルルの法則に従うため、試料室の体積(VCELL)と膨張室の体積(VEXP)が予め分かっていれば、膨張前後の気体圧力P1とP2の測定から、試料の体積を算出することができます。

(引用)マイクロメリティクス社装置カタログより
3.乾式自動密度計の仕様
測定装置 |
乾式自動密度計 マイクロメリティクス社製 AccupycIII 1350 |
最大資料容積 (試料セル寸法) |
10 cm3 (φ18.5×39.5 mm) |
使用ガス |
ヘリウム(He) [G1/純度 99.99995%以上] |
測定温度条件 |
室温、10~60°Cの範囲内で設定可能 |
測定条件 |
・真空処理 |
4.試料情報
- ・対象試料:粉体・固体試料、液体試料の測定も可能 ★ガスが発生する試料や揮発性試料は測定不可です。
- ・試料形状:試料セル寸法 18.5×39.5mm[10cm3]に入る大きさ ※粉砕又は切断が必要な場合は、ご相談下さい。
- ・必要試料量目安:粉体、固体、液体 共に8cm3/測定 ※少量試料の測定をご希望の場合は、ご相談下さい。

5.気体置換法による密度測定事例
5.1 固体試料の測定事例;球状の鋼
・測定試料
球状の鋼 大きさ:質量;94.9562 g、体積;6.3713 cm3
・測定条件
使用ガス:ヘリウム 温度:23°C 真空処理:無 パージ回数:5回 パージ充填圧力:134.45 kPaG 測定サイクル:10回 サイクル充填圧力:134.45 kPaG 平衡率:0.034 kPaG
・測定結果
◎気体置換法による密度測定結果 14.9 g/cm3(10回連続測定の平均値)
◎幾何学的測定法による密度算出結果 14.9 g/cm3
◆幾何学的測定法と、近似した測定結果が得られました。

5.2 粉体試料の測定事例;セメント
・測定試料
セメント 管理値:3.10~3.20 g/cm3
・測定条件
使用ガス:ヘリウム 温度:23°C 真空処理:無 パージ回数:3回 パージ充填圧力:134.45 kPaG 測定サイクル:15回 サイクル充填圧力:134.45 kPaG 平衡率:0.034 kPaG
・測定結果
◎気体置換法による密度測定結果 3.14 g/cm3(15回連続測定の平均値)
◆管理値の範囲内に収まる結果が得られました。液浸法と比較すると、精度の良い測定結果が得られました。
液浸法 | 気体置換法 | |
N数 |
11 |
11 |
平均値(g/cm3) |
3.14 |
3.14 |
標準偏差(g/cm3) |
0.019 |
0.001 |
RSD(%) |
0.61 |
0.03 |
