電解液の組成元素分析(有機溶媒直接導入-ICP法)
STM-2304
1.概 要
当社では、電池性能を左右する電解液組成元素の定量分析において、有機溶媒直接導入-ICP法を採用することで、精確な定量分析が可能となりました。
リチウムイオン電池(LiB)に使用されている電解液は、一般的にプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC) 、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの混合溶媒であり、電解質としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩が溶解しています。LiPF6は吸湿すると加水分解し、フッ化水素酸(HF)とオキシふっ化りん(F3OP)ガスが発生する為、通常の水溶液導入系ICP定量では精確な定量が困難です。
LiPF6 ⇆ LiF + PF5
PF5 + H2O → 2HF + F3OP↑
誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)に関する技術紹介はこちらから
2.有機溶媒直接導入法とは
一般的なICP測定(一般水溶液導入系)では、液状有機物をプラズマ内に直接導入すると、イオン化効率の低下や有機物由来の煤(すす)発生による導入系の閉塞などが起こり定量ができない為、事前に有機物を分解し、水溶液にしてからICP測定を実施する必要があります。一方、有機溶媒直接導入法では、
1.プラズマ内に導入する試料量の適正化
2.導入系の冷却強化(揮発性の有機溶媒サンプルに有効)
3.アルゴンガスへの酸素添加による煤発生抑制
などの条件を最適化することで水溶液化することなく定量が可能です。

3.分析事例;LiB用電解液の電解質構成元素定量(Li,P定量)
電解液試料の場合、加熱せず水との接触を極力避けて試料調製する必要があります。
今回は、
1)電解液試料を直接溶媒に希釈し、そのままICP-OES装置へ導入する有機溶媒直接導入-ICP法
2)電解液試料を水で希釈し、通常の水溶液導入系ICP法
で測定を実施しました。結果を図2に示します。
