TEMクライオホルダーによる低融点材料の観察
RSM-2404
1.概要
クライオホルダーとは、液体窒素により観察サンプルを-160°Cに冷却した状態でTEM観察が可能となる試料ホルダーです。冷却する事で、電子ビーム照射による局所加熱やダメージが抑えられ、組織や組成の変質を抑制し、低融点材料の組織観察や結晶構造解析、電子ビーム照射で昇華し易いアルカリ金属類(Na,K等)のEDS分析など、常温TEMでは変質しやすかった材料についてもTEMでの解析調査が可能となります。
透過電子顕微鏡法(TEM)・走査透過電子顕微鏡法(STEM)に関する技術紹介はこちらから
2.TEMクライオホルダーの特徴
1)液体窒素温度近傍(-160°C)に冷却した状態でTEM観察が可能
2)X,Y二軸傾斜機構の搭載により、極低温状態のまま高精度の結晶構造解析が可能
3)液体窒素の揮発振動の影響を受けず、微細領域(nmオーダー)の局所的な観察・分析が可能
※使用装置:冷却二軸傾斜雰囲気遮断ホルダー(Mel-Build製:DTLN2Atmos Defend Holder)
3.評価事例
事例1;化成処理相のクライオ観察
化成処理相はリン酸亜鉛水和物で構成されており、電子ビーム照射による局所加熱が起こりやすく、右側TEM像の赤枠で示す様に従来の常温観察では顕著なダメージ痕が形成されています。< br>一方で、クライオ観察は電子ビーム照射による局所加熱・組織変質が抑制される為、電子照射によるダメージ痕が形成されず、常温観察では対応困難だったダメージレス観察が可能となります。

事例2;結晶化ガラス材料のクライオ観察
左上のTEM像が結晶化ガラスのクライオ観察例であり、非晶質相内にナノ結晶が分散した複合組織を形成している事が分かります。一方、左下のTEM像は結晶化ガラスの常温観察例であり、電子照射ダメージによってナノ結晶粒が非晶質相に変質している事が確認できます。
また、右側に示すEDS結果ではクライオ分析でNaやKを多く検出されるのに対し、常温分析ではNaやKが電子照射で昇華されてしまいEDS信号が検出されなくなっています。
この様にクライオホルダーによるTEM調査では、低融点材料や電子線に弱い材料の組織変質や成分変質が抑制されて、材料本来の正しい状態を評価する事が出来ます。
