ICP-AES/ICP-MS法による各種原材料中ケイ素、ホウ素定量
HRM-1625
1.概要
各種製品の材料や原料の主要化学組成や微量成分量を正確に把握することは、性能や使用環境への影響を考える上で重要です。
代表的な定量分析装置として、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)装置があります。
通常のICP-AESやICP-MS装置は、ネブライザー、チャンバー、プラズマトーチが石英又はホウケイ酸ガラス製の為、ガラスを浸食するフッ化水素酸を含んだ溶液を装置に導入することができません。このため、前処理工程においてフッ化水素酸を除去する加熱操作が必要となるので、ケイ素やホウ素などフッ化水素酸共存下で加熱することで揮散してしまう元素は定量することができません。
当社では、樹脂製ネブライザー、セラミックス製チャンバー、サファイヤ製インナートーチからなる耐フッ化水素酸システムを装備したICP-AESやICP-MS装置を保有していますので、ロスのない高精度なケイ素、ホウ素定量が可能です。
誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)の技術紹介はこちらから
2.耐フッ化水素酸導入システムを装備したICP-AES測定の事例
フッ化水素酸(48%)を10倍希釈したものにSi及びBを段階的に添加し測定を行いました。
分析装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製・耐フッ化水素酸試料導入系装備(iCAP6300Duo)



(mg/L)
標準添加濃度 | +0.1 | +0.2 | +0.5 | +1.0 | +2.0 | +5.0 | |
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ケイ素 | 実測値 | 0.1030 | 0.2009 | 0.5087 | 1.0023 | 1.9937 | 5.0010 |
ホウ素 | 実測値 | 0.1015 | 0.2004 | 0.4903 | 1.0051 | 2.0043 | 4.9982 |
フッ化水素酸溶液中のロスのない高精度なケイ素、ホウ素定量が可能です。
3.応用事例
1)各種合金中の微量ケイ素(Si)定量;例.チタン材中ケイ素(Si)の定量下限目安:ICP-AES 50 mg/kg
2)フッ化物含有試料中のケイ素(Si)ホウ素(B)定量;例.廃水中イオン状シリカの定量下限目安:ICP-MS 10μg/L
※加水分解して水和酸化物として沈殿しやすい元素であるニオブ(Nb)、タンタル(Ta)中の成分定量を行う場合でも、フッ化水素酸共存下で直接ICP-AES、ICP-MS測定を行うことで高精度な定量が可能です。