熱分解(Py)-GC/MSによる樹脂の同定

HRM-1619

1.概要

熱分解(Py)-GC/MSは、試料導入部に熱分解装置を設置したガスクロマトグラフ質量分析計です。熱分解装置で試料を加熱し、発生したガスをGCに導入するため、前処理なしで分析を行うことができます。
樹脂試料を不活性ガス雰囲気下で高温(600°C程度)で瞬時に熱分解させ、得られる熱分解生成物から、試料中の成分を推定することが可能です。また、少量試料(100μg程度)で測定が可能であり、異物等の分析にも有効な分析手法です。

各種製品に使用されている樹脂の同定や添加剤の同定が可能です!

ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS)の技術紹介はこちらから

2.分析事例1;ホースの材質調査

図1.供試料(ゴムホース)
図1.供試料(ゴムホース)

図1.に示すホースの材質調査をPy-GC/MSにより行いました。
試料の一部(約0.1mg)を採取し、測定を行いました。

測定結果(図2.)より、得られた熱分解生成物には、環状シロキサン由来と考えられるピークが強く検出され、ポリジメチルシロキサンの熱分解生 成物と類似しているため、ホース中の樹脂成分として、ポリジメチルシロキサンが存在することが考えられます。

図2.ゴムホースのPy-GC/MS測定結果
図2.ゴムホースのPy-GC/MS測定結果

3.分析事例2;粉末の材質調査

図3.に示す粉末試料の材質調査を行いました。デジタルマイクロスコープVHX-600(株式会社キーエンス製)による拡大写真撮影及び、Py-GC/MS測定を行いました。

図3.供試料(粉末試料)
図3.供試料(粉末試料)
図4.粉末試料の拡大写真(100倍視野)
図4.粉末試料の拡大写真(100倍視野)

デジタルマイクロスコープで拡大写真観察した結果(図4.)より、粉末試料は透明な球形の物質であることが分かりました。
Py-GC/MS測定結果(図5.)より、試料を600°Cで加熱した際に得られた熱分解生成物からは、メタクリル酸ブチル由来のピークが強く検出され、試料中にポリメタクリル酸ブチルが存在することが考えられます。また、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)由来のピークが検出されていることから、試料中に添加剤として、BHTが含まれることが考えられます。

図5.粉末のPy-GC/MS測定結果
図5.粉末のPy-GC/MS測定結果

Py-GC/MS装置紹介についてはHRM-1618 熱分解(Py)-GC/MS装置紹介

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