示差走査熱量測定(DSC)の紹介

HRM-1604

1.示差走査熱量測定(DSC)とは

示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)とは、測定試料と基準物質の温度をプログラムに従って変化させていき、その過程での両者の温度差を計測することで、試料への熱の出入り(吸熱・発熱)を定量的に測定する手法です。融解、ガラス転移、熱履歴、結晶化、硬化、キューリー点、酸化安定性、熱変性などの分析に利用できるだけでなく、比熱※1測定や純度測定に応用できます。
DSCはDTA※2より感度が良いためDTAでは見ることのできない小さな挙動も見ることが可能です。

原理図
原理図

※1 比熱とは1gあたりの物質の温度を1°C上げるのに必要な熱量(J/g・K)
※2 示差熱分析(DTA differential thermal analysis)

示差走査熱量計(DSC)に関する技術紹介はこちらから

2.得られる情報

DSC測定例
生じた反応が発熱なのか吸熱なのかの評価だけでなく、ピークの立ち上がり温度やピークトップ温度から、転移温度の評価が可能です。また、ピーク面積からその熱量を算出できます。
比熱測定例
同じ条件かつ同じ温度プログラムで空容器、基準物質、試料の測定を行います。比熱値が既知の基準物質と、試料のDSC曲線の高さの比から、試料の比熱値を算出できます。

3.測定例

4.装置仕様

  低温用DSC装置 高温用DSC装置
外観 低温用DSC装置 高温用DSC装置
(1)装置名 NETZSCH製 DSC200F3Maia NETZSCH製 STA449c Jupiter
(2)測定項目 融点温度、融解熱量、ガラス転移点、変態点、結晶化温度、比熱、キュリー点等
(3)温度範囲 -150°C~600°C(比熱の算出範囲は-120°C~550°C) 室温~1300°C(比熱の算出範囲は300°C~1250°C)
(4)昇温速度 設定可能範囲は0.001°C~100°C/min
(制御冷却速度Max-20°C/min)
設定可能範囲は0.1°C~50°C/min
(1200°C以上はMax20°C/min)
(5)測定雰囲気 窒素雰囲気(通常)、アルゴン雰囲気、疑似エアー雰囲気 窒素雰囲気(通常)、アルゴン雰囲気、疑似エアー雰囲気
(6)使用容器 アルミニウム製(上限500°C)、白金/ロジウム製 白金/ロジウム製、アルミナ製、アルミナライナー入り白金/ロジウム製
(7)試料形状 Max 5.2mmφ (比熱は6mmφ) ×1.5mm厚程度 Max 5.5mmφ ×1.5mm厚程度

※試料の加工等、お気軽にご相談下さい

図.容器写真
図.容器写真

5.装置特長

低温用DSC装置 高温用DSC装置
  • 高感度センサーにより、少ない試料量でも精度よく測定
  • 蓋が3重構造になっており外気の入り込みが少ない
  • 冷却過程や低温下限付近のノイズが少ない
  • TG※3とDSCを同一条件で測定し比較可能
  • 試料重量変化も同時に求めており、エンタルピー変化(J/g)を正確に求められる
  • 真空排気による完全なガス置換が可能
  • 再現性が良く、低温DSCでは-120°C~550°Cの比熱測定が、高温DSCでは、300°C~1250°Cの比熱測定可能
  • マスフローコントローラー内蔵による、正確な雰囲気ガス制御

※3 熱重量測定(TG:thermogravimetry)・・・詳細はHRM-1605 TG-DTAの紹介を参照

6.PDFダウンロード

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