電子スピン共鳴法(ESR)による有機材料の劣化観測

FTM-2201

1.概要

電子スピン共鳴装置(ESR)は磁場中に置かれた不対電子がマイクロ波を吸収して励起する原理を利用し、マイクロ波の吸収からラジカルの種類や量を測定することができる手法です。本法を用いた評価事例として、有機材料に紫外線照射や加熱をしながら不対電子(ラジカル)の変化をin situ測定することにより、材料の劣化挙動評価をご紹介します。その他、本法を用いた材料評価事例もご参照下さい。

本評価に用いた電子スピン共鳴法(ESR)の技術解説はこちらから

・測定原理

測定原理

・測定対象と事例

評価対象 事例
有機材料(樹脂、炭素材、高分子材料等) ・劣化評価(酸化、熱劣化、光劣化等)
・反応性評価
電池材料 ・LiB中の金属Liの評価
・負極材の評価(劣化、導電性)
触媒材料(TiO2等) ・活性点の評価
・反応中間体の評価
金属イオン ・価数評価
・材料中の金属イオンの評価
活性酸素 ・反応性評価など

*装置内で紫外線照射や加熱をしながらラジカルの変化をin situ測定することもできます。

2.測定事例;紫外線照射によるアラミド繊維の劣化観測

測定内容

耐切創手袋等に用いられるアラミド繊維は紫外線により変色したり、繊維の物性が低下(劣化)することが知られています。
本事例ではアラミド繊維に紫外線を照射し、劣化の指標としてラジカルの生成をin situ測定しました。

図1 アラミド繊維のESRスペクトル
図1 アラミド繊維のESRスペクトル
写真;調査試料(アラミド繊維)
写真;調査試料(アラミド繊維)

・標準試料によるラジカル数の定量結果

UV照射前 UV照射後
3×1017個/g 8×1017個/g

・結果

1.検出ピークの位置(g値)から-C-O(COラジカル)の生成が確認できました。
2.ピーク面積の比較から紫外線照射でのラジカル数の増加(約3倍)が確認されました。

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