XPSを用いた酸化皮膜分析(カラーステンレスの深さ方向分析)
AMM-1703
1.概要
X線光電子分光分析 (XPS X-ray Photoelectron Spectroscopy) は、 検出深さが数nmの表面分析法 として知られていますが、 Ar+スパッタリングを併用する事で深さ方向への分析も可能となります。 XPS を用いた深さ方向分析では、本分析法の特徴でもある結合状態分析を深さ方向分析に適用する事により、 金属成分と酸化物成分とを分けた組成プロファイルを描くことができます。
X線光電子分光分析 (XPS/ESCA)の技術紹介はこちらから
2.装置仕様
Ulvac-Phi 社製 | VersaProbeIII & Quantera SXM |
---|---|
X線 | mono-AIKa (hv=1486.6eV) |
分析領域 | 9μmφ~1400×300μm口 (可変) |
スパッタ用イオンガン | Ar+, Ar-GCIB |
Sput.Rate | 約1nm/min.~約50nm/min(SiO2換算値) |
試料サイズの目安 | 10mm×10mm×1mmt 程度 |
最大搭載サイズ | 50mm×50mm×5mmt |

3.試料情報

4.カラーステンレスの深さ方向分析の結果
下図に示す各々の深さ方向分析結果より、色調と酸化膜厚の大小関係は Green(360nm)>Magenta(290nm)>Gold(250nm)>Blue(140nm)Black(130nm) の順列であることが分かりました。
さらに、XPSが得意とする結合状態解析を深さ方向分析に適用する事で、各々の元素の酸化物or金属成分が、どれくらいの量比率で、どんな深さまで存在しているのか?について判別する事が可能です。
カラーステンレスの深さ方向分析結果では、鮮やかに発色したステンレスの酸化膜厚に差があるだけでなく、GreenはほぼCr酸化物からなる厚い酸化皮膜である事、Blue,Gold,MagentaはCrとFeを含む酸化皮膜組成としてはほぼ同一で各々酸化皮膜の厚さが異なっている事、Blackでは酸化皮膜自体は薄く金属成分と酸化物とが混在するまだらな皮膜が生成している事が判りました。
普段身近に感じている製品の変色に関わる問題はナノメートルオーダーの表面で生じている酸化や腐食が関与している事も多く、XPSはそういった表面に関する分析・解析に威力を発揮します。
