ICP-OES測定による希土類磁石中の元素定量

STM-2202

1.概要

希土類元素(レアアース)を含有する希土類永久磁石は自動車産業、電子産業、医療機器などで幅広く使用されており、原料管理・プロセス制御・高純度化(不純物制御)等において、元素濃度の分析を高精度で行う必要があります。
しかし希土類元素は化学的性質が類似しているためスペクトル干渉を受けやすく、ICP発光分光分析(ICP-OES)では分析困難な元素として知られています。

これらの機能により、例えば、希土類永久磁石中の含有元素を微量域から高濃度域まで高精度で定量する事が可能です。

本評価に用いた誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)はこちらから

2.ICP-OES装置仕様

装置名

Agilent5900
(アジレントテクノロジー製)

測定波⻑領域 167〜852nm
測光モード アキシャル測光、ラディアル測光、同時測光可能
分解能(半値幅) As 188.980nm<6.5pm
バックグラウンド補正 スペクトル干渉補正(FACT)、自動フィッテング
導入系 1.一般水溶液用導入系
2.フッ化水素酸試料用導入系
3.水素化物発生試料用導入系
4.有機溶媒試料用導入系
図1 Agilent5900 装置外観

3.測定事例

事例1;サマリウム-鉄系磁石中の微量元素の定量~回収率調査~

サマリウム-鉄系磁石中の微量元素の定量分析を想定し、添加回収法により定量精度の評価しました。

・評価法

主成分のSmとFeは純金属標準物質の配合後酸溶解で作製し、評価する微量元素は各元素の標準液を1mg/L添加し、ICP-OES装置(Agilent5900)で測定して回収率を求めました。

・結果

1.スペクトル干渉補正を行わない場合、Pr測定ピーク(⻘線)はSmのスペクトル干渉を受け複合ピークとなる為、Prの定量が困難でした。そこで補正を実施しSm由来のピーク(赤破線)を除去してSmの干渉を除いた結果、干渉の無いPrのピーク(緑線)を得ることが出来ました(図2)。
2.スペクトル干渉補正後のデータを用いて各元素の回収率を求めた結果、いずれの元素においても100%に近い回収率を得ることが出来ました。

図2 スペクトル干渉補正測定例(サマリウム-鉄系磁石中Pr測定)
図2 スペクトル干渉補正測定例(サマリウム-鉄系磁石中Pr測定)
図3 サマリウム-鉄系磁石の添加回収率測定結果
図3 サマリウム-鉄系磁石の添加回収率測定結果

事例2;希土類鉱石標準試料(GRE-06)の定量

希土類鉱石標準試料(GRE-06)を酸溶解及び残渣処理後、ICP-OES装置(Agilent5900)で測定しました。
スクリーニング測定により主成分元素・その他含有元素とおおよその濃度を確認し、その結果を元に、最適波⻑の選定とスペクトル干渉補正の対象元素を決定し、本測定+スペクトル干渉補正を実施しました。結果を図4に示します。

・評価フロー

1.スクリーニング測定(主成分はCe,Fe,La,P,Ndその他、Pr,Ca等も含有していることが判明)
2.ICP-OES本測定
3.データ確認(ピーク確認、検量線直線性確認、バックグラウンド確認等)
4.スペクトル干渉補正の実行(今回の補正対象元素:Dy,Zr,Sc)…図5参照

スクリーニング測定では、主成分元素・その他元素とおおよその濃度を確認することが可能です。未知試料や初めての試料の分析時に有用です。

図4 希土類鉱石標準試料(GRE-06)の定量結果
図4 希土類鉱石標準試料(GRE-06)の定量結果

4.まとめ

 

・ICP-OESによる希土類磁石中微量金属元素の定量下限目安

※ 0.01%分析に必要な試料量;100mg以上
※より微量域の定量は、ICP-MS法にて対応可能です。ご相談下さい。

5.PDFダウンロード

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