コンクリート中のような強アルカリ環境下(pH12~13)では、鉄筋表面には不動態皮膜と呼ばれる緻密な酸化皮膜が形成され、腐食しにくい状態にあります。
しかし、中性化によってpHが低下したり(一般にpHが10.5以下になると鉄筋腐食が開始するとされています)、塩化物等が浸透すると、不動態皮膜が破壊されて鉄筋が腐食しやすい状態となります。
コンクリート中の鉄筋の腐食状況を推定するために、電気化学的手法(自然電位法、分極抵抗法:交流インピーダンス法)を用います。下の図は、コンクリート中の鉄筋腐食の模式図です。アノード部では鉄筋が溶出して腐食が進行しています。一般に、アノード部では電位が低く(卑)、分極抵抗が小さくなり、反対にカソード部では電位が高く(貴)、分極抵抗が大きくなるという特徴があります。
鉄筋腐食診断センサー(日本製鉄(株)開発)で自然電位と分極抵抗を測定することにより、コンクリート内部の鉄筋の腐食状況を推定します。また、この装置の販売も行っています。
鉄筋腐食診断センサーのプローブは、写真のように中央に照合電極、その周囲にステンレス製対極が配置されています。図のように鉄筋直上のコンクリート表面にプローブを設置し、自然電位を測定しながら、対極から内部の鉄筋に電流を流します。
特定の周波数の交流電流を用いることにより、見掛けの液抵抗(Rs':コンクリート抵抗)と分極抵抗(Rp')を分離することができます。測定の時点では、見掛けのRp'を求められるだけで、単位面積あたりで定義されるRpは解析から求めます。
鉄筋の腐食速度は、分極抵抗に反比例することから、以下の式で腐食電流密度を算出することができます。
Icorr=K・(1/Rp)
Icorr:単位面積あたりの腐食電流密度(A/cm2)
K:換算係数(V)、実験から求められ0.026Vがよく用いられます。
Rp:分極抵抗(Ω・cm2) ←後述のBEMによる電流分布解析と現場での実測値から求めます。
腐食電流密度から、以下の式を用いて、腐食減量を求めることができます。
G:腐食減量(g/cm2)
M:鉄の原子量
z:鉄のイオン価数(= 2; Fe→Fe2+ + 2e-)
Fa:ファラデー数(96500C)
測定前に散水を行い、コンクリートを湿潤状態にしておきます。鉄筋探査器を用いて、配筋状況を確認し、測定箇所をマーキングします。写真のようにプローブをコンクリート表面に設置して、自然電位:Ecorr、見掛けの液抵抗:Rs'、分極抵抗:Rp'を測定します。
かぶり、配筋、測定位置をモデル化します。図のように境界要素法(BEM)による電流分布解析を行いますと、対極から鉄筋に対してどのように電流が流れたかを推定することができ、単位面積あたりのRpを精度良く算出することができます。
見掛けのRp'から単位面積あたりのRpを解析から求め、腐食量を推定します。