X線回折装置(XRD)

概要

X線回折法は、物質の構造解析に用いられている一般的な方法です。

その他にも、材料・製品・構造物の残留応力測定に従来から用いられてきています。

しかし、この残留応力測定は試験片形状、測定部位に対応した様々なノウハウが必要です。

当社は、鉄鋼材料を対象にこのノウハウを確立し、その後種々の材料、部材の測定実績を重ねてきています。

残留応力測定のニーズがございましたら、是非ご一報下さいますようお願い申し上げます。

残留応力測定

測定原理

  • 外部からの応力は材料を構成する格子面間隔に影響を及ぼします。
  • 応力によって歪んだ格子は、入射X線に対する回折X線の角度に影響を及ぼします。
  • 応力と測定パラメーターとは式1のような関係で表せます。
  • したがって、実験によって2θ-sin2ψの関係図を求め、最小二乗法で勾配を求め、
     K(材料および測定波長によって定まる定数)を乗ずることによって応力が求まります。
  • 式1

測定可能な材料、形状等

機器名 特徴 対象、実施例 標準サイズ

PSPC-MSF

(Target:Cr)

(Target:Cu)

1mmφ平行ビーム(最小0.3mmφ)
40KV-40mA、ヤング率、ポアソン比、d値

微小部、曲線部、条件設定

歯車、歯面、歯底
Al、Ti、Cr、Cu、WC
α-Al2O3、ZrO2

アモルファス(部分結晶)
Co,W(溶射膜)
Si3N4、Ni合金
薄膜TiN、TiC(3000Å)

120x250x300mm
0.5x0.5mm以上
5Kg以下

測定例

アルミ系円筒円周方向残留応力測定例

<アルミの残留応力に必要な定数と条件>

・結晶構造---FCC(面心立方晶)

・格子定数---4.0494(Å)

・弾性定数---70600MPa

・ポアソン比---0.345

・測定波長---Cr-Kα 2.291(Å)

・回折面---(111)面間隔 1.1690(Å)

・回折角---156.6°(2θ)

・応力定数--- -94.86MPa/deg

式1

鉄系ワイヤ長手方向残留応力測定例

※強配向性のため、測定点のうねりあり。

<フェライト、マルテンサイトの残留応力に必要な定数と条件>

・結晶構造---BCC(体心立方晶)

・格子定数---2.8664(Å)

・弾性定数---205940MPa

・ポアソン比---0.28

・測定波長---Cr-Kα 2.291(Å)

・回折面---(211)面間隔 1.1702(Å)

・回折角---156.4°(2θ)

・応力定数--- -318.13MPa/deg

式1

構造解析

目的別測定可能対象

X線源 目的 特徴 対象、実施例 標準サイズ
Cu Kα 物質同定
(組成形態)
集中法
薄膜法
多結晶
200Å以上
10×10mm板、塊、粉
厚さ4.9mm以下
構造解析 結晶系、面指数、格子定数の決定
黒鉛の格子定数測定(学振法に準拠)
超電導材、化合物
炭素繊維
10×10mm板
繊維
結晶子径測定 ε=λ/β1×cosθ
2重線分離、2重線と光学系拡がり補正
薄膜Al、Fe(2000Å)
炭素(メソフェーズ)
10×10mm板
板、粉(1g)
不均一歪測定
(Hallプロット法)
(βcosθ/λ)=(2ηsinθ/λ)+(1/ε) 炭素鋼、SUS 10×10mm板
10×10mm板
結晶化度測定 金属系(検量線)、格子定数変化法
X=〔1-(ln/lp)〕×100
X=〔1-(ΣLa/Σia100)〕×100
炭素(メソフェーズ)
アモルファス
W5Si3(3000Å)
粉(1g)
10×10mm板
組成定量
半定量
吸収補正、侵入深さ、膜厚:1~30μm
多元素の定量(検量線)
FeO、Fe2O3、Fe3O4、ロール
α、β、γ-FeOOH
粉(1g)
10×10mm板
残留γの定量 Cr Kα併用 α-(211)とγ-(220)面の強度
(加工誘起マルテンサイトの定量)
Mo Kα併用 組み合わせ
式2
微小部
1×1mm板
炭素鋼 25×25mm板
Mo Kα 集合組織
(多結晶)
正極点図(シュルツ反射法)
標準試料との強度比、α β回転
板面に平行な結晶面方位の解析
α、γ-Fe、Ni
Al、Ti、Cu
25×25mm板
配向性測定
(多結晶)
軸密度(h、k、L)測定 薄膜Al、Fe(2000Å)
Mo2Si(2500Å)
25×25mm板
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