機械設備や構造物が破壊により損傷した場合、破面には破壊の開始から破断に至るまでの痕跡がすべて残されています。破面解析(フラクトグラフィ)とは、破面に残された貴重な痕跡を調査することにより得られた情報を元に、破壊の機構や破損の原因を解析する手法です。
破壊原因には疲労破壊、脆性破壊、延性破壊、応力腐食割れ、水素割れなどがあり、破面を詳細に観察することにより破壊原因を特定します。更に破面観察から破壊の起点やき裂進展方向の推定を通して、部材にかかっていた負荷の状況や応力の状況が推定できます。
弊社では破損原因調査専門のスタッフが、目視観察からSEMおよび表面のEDX分析等を駆使し、お客様に満足いただく破損原因調査を実施しております。
低合金鋼シャフトの破壊状況
破壊の進展に伴い、まず疲労破壊に起因するストライエーションが見られ、次に脆性破壊による劈開破壊面が観察されます。最後に延性破壊によるディンプルが見られます。
(1)ストライエーション
(疲労破壊)
(2)劈開破壊
(脆性破壊)
(3)ディンプル
(延性破壊)
曲げモーメントの繰り返しによるボルトの疲労破壊
破面の外観写真
破面の概念図
(1)起点部
(2)ストライエーション
(疲労破壊)
オーステナイト系ステンレス鋼の応力腐食割れ調査の例-1
き裂発生状況(外観写真)
き裂発生部の断面組織
破面観察では、応力腐食割れに特有の流れ模様が観察されます。
き裂破面外観
破面SEM像(流れ模様)
高力ボルトの遅れ破壊(水素割れ)の例
破断ボルトの外観(切断後)
破面外観
破面模式図
起点部鳥瞰
粒界破面
疲労破壊したステンレス鋼板の応力推定
写真1の破面観察から測定したストライエーション間隔を図1に示します。き裂長さとストライエーションの間隔の関係が図1に示した関数として表されます。
ここで疲労き裂進展速度da/dN(一回の繰り返しおけるき裂長さの変化量:疲労き裂進展速度)とストライエーション間隔S(a)を等価と仮定すると、
数式の関係から疲労き裂発生から破断までの繰り返し数 N は8550回と推定されます。
さらに、当該鋼材の疲労き裂進展特性
と、応力拡大係数
との関係より、き裂長さと応力振幅の関係が図2の様であったことが推定されます。ここでσは応力振幅、F(x)はき裂形状と荷重形式の補正関数です。
写真1 疲労破壊破面の
ストライエーション測定位置
図1 き裂長さと
ストライエーション間隔の関係
図2 き裂長さと
推定応力振幅の関係