古代末期~中世初期の鍛冶遺構出土した約230kgの遺物のうち、鉄関連遺物として小札、鏃(やじり)などの鉄製品と、鉄塊、羽口片が出土しました。
これら出土品について、金属学的解析調査を行った事例を紹介します。
大きさはこぶし大で重量感があり、表面は茶褐色および紫色を呈し、所々に小さなひび割れが観察されます。
化学成分から、コバルト(Co)、リン(P)が高めであることが分かりました。
断面マクロ・ミクロ組織観察結果は下の写真に示します。
内部の金属鉄中には、0.数mmから数mmの丸みをおびた空孔が存在します。これらは、鉄塊が半溶融状態におかれた時に発生したガスが塊中に閉じ込められたためと推測されます。
鉄塊の内部には金属鉄が残存しており、下記の金属組織が確認されました(金属組織観察により、ある程度鉄中の炭素量が推定できます)。
介在物は、中央部がウスタイトとガラス質珪酸塩を主体とするチタン分の低い介在物、また周辺部にはファイヤライトとチタン化合物を主体とする介在物が存在することが判明しました。
表層は若干錆化の進んでいるものの、内部は健全な金属組織を示します。
介在物中にやや大きな結晶のチタン化合物の存在が認めらます(下のEPMA分析結果)。
このように同一の遺構から出土した鉄塊系遺物と鍛造製品(鏃)より、同系統の不純物(チタン化合物)が確認されたことから、鉄塊から鍛冶作業を経て、鏃のような鉄製品が製作されていたことが推察されました。
これ以外の科学的情報も追加し、遺物の始発原料や製鉄法の考察がなされました。
弊社では、お客様の調査目的に沿った調査方法のプランニングから携わらせていただきます。
始発原料、製鉄法、加工法や遺跡の性格付けなどの考古学評価を行うために、化学的分析手法や金属組織学的評価等、客観的な科学的調査方法のご提案と、的確な情報をご提供させていただきます。