ラマン分光分析装置

概要

レーザー光を利用して、材料表面や気体の構造情報(結合状態、応力、結晶性)を非破壊で分析する手法です。

原理

試料にレーザー光を照射すると、両者の相互作用によって照射光と異なる波長の微弱な散乱光が出てきます(ラマン散乱)。この散乱光は物質を構成している分子の振動エネルギーに対応しているため、波長シフト(ラマンシフト)を計測することで、
(1)ピーク位置から化合物形態(化学結合の種類)
(2)ピークの半値幅から結晶化度(半値幅が小さいほど、結晶性が高い)
(3)ピークの強度から配向性(偏光時のピーク強度変化)や濃度(基準物質との相対強度から算出)
(4)ピークシフト値から応力・歪量

などの分子構造情報を得ることができます。

レーザー光図

装置仕様

  • 使用装置 日本分光(株)NRS-7100
  • 仕様
    レーザー波長:532nm、785nm
    スポット径:1μmφ、2μmφ、4μmφ、7μmφ
    最大試料サイズ: 50cm×50cm×20cm
    アクセサリー:加熱ユニット
  • 測定内容
    ・ポイント測定
    ・マッピング測定

    ・in situ測定(加熱)

    加熱ユニット外観

    加熱ユニット外観

全体・内部

評価対象

  • 材料
    有機材料(プラスチック、ゴム、樹脂、染料)
    炭素材、半導体材料(Si、SiC)
    無機材料(顔料、鉄、めっきなどの腐食生成物)
    複合材料(塗料)
  • 形状
    固体(板、箔、棒線、粉体、ばね等の加工品)
    液体、 気体(材料中の気泡、工程ガス)

ラマン分光法による評価事例1:鉄鋼製品の腐食生成物のマッピング測定

Feの酸化物、水酸化物のラマンスペクトル例

図A Feの酸化物、水酸化物のラマンスペクトル例

鉄の酸化物、水酸化物のラマンスペクトル例を図Aに示します。

これらのスペクトルから、成分同士のピークが重ならない特有のピークを選択し、色分けすることで、鉄の形態分布状態を観測することができます。

鉄鋼製品の大気暴露材の成分分布例

図B 鉄鋼製品の大気暴露材の成分分布例

ラマン分光法による評価事例2:スケールの応力評価

Neの輝線を用いたピークシフト補正結果

図A Neの輝線を用いたピークシフト補正結果

応力に起因するピークシフト量は微小であり、測定時の温度や振動の影響をうけます。

この波数校正には試料のラマンピークと同時にNeの輝線を測定し、設置環境起因のピークずれを補正します。図AにNeの輝線を用いたピークシフト補正結果を示します。

無ひずみ状態の粉末試料とNeのピークの間隔Xは環境によるピーク変動に関係なく一定で、環境起因のシフト方向は連動しています。環境起因のピークシフトはNeの変動値Yとなります。実試料のピークシフトからYを差し引くと試料の応力起因のピークシフト値が求められます。

鋼材の表面スケールの応力分布測定例

図B 鋼材の表面スケールの応力分布測定例

酸化スケール表面の応力分布が、圧縮応力は暖色部分、引っ張り応力は寒色部分として可視化されています。

断面からの分布を観察すると、表面皮膜の強度の予測にも利用できます。

ラマン分光法による評価事例3:炭素材の評価

炭素材のラマンスペクトル例

図A 炭素材のラマンスペクトル例

炭素材は多様な構造形態をとりますが、その情報はラマンピークの形状に敏感に現れます。そのため、結晶性の炭素材(グラファイトやダイヤモンド)、非晶質の炭素材(カーボンブラックなど)の識別が可能です。 図Aに炭素材の分析例を示します。

構造を反映する、GピークとDピークの強度比(D/G:R値)と⊿G(Gピークの半値幅)は炭素材の結晶性、構造の乱れの評価値として用いられます。 結晶性が低いほどR値は大きくなり、また構造の乱れが大きいほど⊿Gは大きな値となります。

波形分離例

図B 波形分離例

図Bには、炭素材のラマンスペクトルと波形分離によるG、Dピークの抽出処理、R値、⊿Gの算出例を示します。

⊿Gの比較から、試料(1)は試料(2)よりも結晶性は低く、R値の比較から、試料(1)は試料(2)よりも構造の乱れは少ないことがわかります。

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